コロナウィルスが世界中に流行するパンデミックとなり、世界各国でロックダウンなどの規制が取られてから1年たった今、データがそろい始めてわかってきたことに出生率の低下があります。
コロナで少子化傾向
今年になってわかってきた少子化傾向は世界各地で見られる現象です。
欧米やアジアの先進国を中心に、2020年12月から2021年1月の出生率が前年比で約7~22%減っているのです。
これは、世界各国の人口動態に影響を及ぼしそうです。
欧米諸国
たとえば、米国では2020年12月の出生率は前年の7%減となりました。
イギリスでも、2021年の出生率は前年比で8%減になるだろうと予想されています。
ヨーロッパ、特に南欧では出生率の減少がもっと顕著です。
たとえば、フランスの2021年1月の出生数は53,900人と前年の同時期に比べて13%減となっています。年間の出生数も735,000人と戦後最小です。
同様にスペインやイタリアでも同様の傾向が見られます。
コロナ被害をヨーロッパで最初に受けたイタリアではロックダウンの9か月後となる12月の出生率が1年前に比べ21.7%減でした。年間を通じても出生数は40万人で前年比2万人減です。
イタリアではコロナ被害も大きかったことで2020年の死者数が647,000人となっていて、出生数を大きく上回っています。この差は第一次世界大戦当時、スペイン風邪が流行して以来最大だということです。
スペインも2020年12月と2021年1月の出生数が20%落ちています。
出生数の減少が大きいところは新型コロナウィルスの被害が大きかったところに多く、北欧ではそれほどでもありませんでした。
スウェーデンでは出生率が6.4%落ちましたが、コロナ被害がそれほど大きくなかったオランダ、ノルウェー、デンマーク、フィンランドでは出生数化ほとんど変わりないどころか、逆に少し増えたところもありました。
アジア諸国
アジア諸国はどうなのでしょうか。
一足早くコロナを経験した中国では2020年の出生率が14.8%落ちました。
韓国では2020年12月の出生率が7.8%減っていますが、韓国はここ何年も出生率が減少傾向にあるので、長期的な流れなのかもしれません。
1930年代の不景気や1973年のオイルショックなどでも世界各国で出生率が下がることがありました。
不況になると仕事を失うのではないか、所得水準がおちるのではないかという経済的な不安から子供を持つのをためらい、先延ばしにする傾向があるのは自然です。
このような経済的停滞では出生率が一時的に落ち込むことはあっても、その後に復活するのが常です。
でも今回のパンデミックについては、多くの国で第2波、第3波を経験し、各地で生まれる変異株が世界各国で蔓延するという状況で先が見えません。
先延ばしが長引きそうであるどころか、子供を産むことじたいをやめる人も出てくるでしょう。
このような出生率の低下を懸念する国も多く、シンガポール政府は2020年10月~2022年9月までに子供を産む親に3000ドルの支援金を出すとしています。
出生率が増えた国も
とはいえ、このような出生率低下の傾向は世界中すべてに共通するわけではなく先進国での傾向です。
フィリピンではベビーブームが起きているそうです。
国連はパンデミックによって115か国の1200万人の女性が通常の避妊サービスを受けられなくなり、140万人の希望しない妊娠という結果につながると予測しています。
フィリピンのベビーブームも避妊ができなかったことから起きているとのことで、インドネシアでも望まない妊娠による出生が50万人増と予測されています。
日本では?
さて、日本はどうなのでしょうか。
日本の2020年の出生数は前年より2万5917人減り87万2683人と過去最低でした。
前年比2.9%減となっていますが、これも韓国同様、長期的な流れなのかもしれません。
日本の出生率は初めて100万人を割り込んだ2016年以降減少が続いています。
2019年も前年比6%減の86万人でした。
2020年に提出された妊娠届も前年比5.1%減となっているそうなので、2021年は出生数がさらに減る可能性があります。
20から30代の女性の人口全体も年々減っているし、2020年は婚姻数も53万件と前年より12%減少しました。
日本では結婚と出産が強く結びついているので、これから数年出生数はさらに低下すると予測されます。
出生率低下の理由は?
日本では新型コロナウィルスによる行動制限や規制によって、解雇や雇い止めになった人が増えています。
コロナ禍で打撃を受けた飲食業、観光業、エンタメ業界などで働く人には非正規雇用の若者や女性が多く、経済的な不安が結婚や出産をためらう理由になるだろうということは想像がつきます。
コロナ禍では女性の自殺者数が8割増えるなど、生活不安と生きづらさを表すデータが見られるのも心配です。
ただでさえ少子化や高齢化が取りざたされている日本で、新型コロナウィルスの感染拡大が少子化に拍車をかけるようでは、問題がさらに深刻になります。
若者が経済的な理由で結婚や出産をためらうことがないよう、女性が子供どころではないと心を悩ませることがないよう、生活の基盤を安定させる必要があると同時に、安心して子供を産み育てることのできる環境を整えることが重要です。
これまでの少子化対策と地方創生
思えば、少子化についても地方創生についても、ここ何年も何十年も語られ様々な取り組みがなされてきました。
けれども、突出した成果が出ているわけではなく、様々な面でいきづまっているともいえます。
その原因は、これまでの政治がさまざまな課題を先送りし、仕組みから変えることで改革することなく、その場しのぎの対応をしてきたからといえます。
日本が過去に大きな改革をして成功してきたのは「黒船」「敗戦」など国の存在自体を脅かす危機に対峙して、国の仕組みを大きく変えたからでした。
今回のパンデミックはそれほどの危機にはならないかもしれませんが、それでも国の仕組みを改変する機会を与えてくれます。
例えば、それまでにも推奨されてはいたものの、日本ではなかなか進まなかったデジタル化やリモートワークによって、仕事や手続きの方法、働き方・学び方が変わりつつあります。
これをきっかけにして社会の仕組みを変えることで、少子化の流れを止める方向にもっていくこともできるはずです。
若い世代が都会にいなくても満足のいく仕事を得て豊かな生活が送れるようになり、安心して子育てもできるような社会になれば、出生率の低い東京に吸い込まれていく若者が減っていき、日本全体の子供の数は増えるでしょう。
コロナによって少子化がさらに進んでいくのをなすすべもなく眺めているのでなく、コロナのおかげで暮らしやすくなり、若者が幸せになって子供の数も増えるという世の中にしていくためにできることを考えていくべきです。
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