イギリスのロックダウンNo.2の様子とこれからの展望

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Mask Banksy

私の住むイングランドでは11月5日からコロナによるロックダウンNo.2に突入して1週間がたちました。12月2日までの4週間、原則として「ステイホーム」の毎日が続くのは、春のロックダウンに次いで2度目。その時とはかなり異なるイギリスのロックダウンNo.2の様子を報告します。

イギリスのコロナ状況:春から夏にかけて

イギリス、といってもその中でも自治政府のあるスコットランド、ウエールズ、北アイルランドでは独自の規制が導入されているので、今回お話しするのはイギリスの大部分を占めるイングランドの状況です。

イギリスでは春のロックダウンが徐々に解除されてから、夏の間の数か月は通常の生活に戻りつつありました。8月はイギリス版Go To Eatとも言える外食が半額になる政策が行われ大好評だったし、スペインやギリシャなどにホリデーに出かける人もいました。

他のヨーロッパ諸国も同様ですが、春のロックダウンで感染者数も死者数もかなり減り、みんなこれでやっとコロナ流行コントロールに成功したと安心していたところがあったと思います。

10月の地域別警戒レベル

9月に入り学校や大学が始まった頃から、イギリスでは全国的に、感染者数が増え始めました。春の感染爆発はロンドンがひどかったのですが、今回は春には感染が少なかった北部など地方で流行が広がりました。

そのため、10月12日にジョンソン首相は3段階のCovid-19警戒レベルを導入し、各地域を3つの警戒レベルに分けて地域別の規制を導入すると発表しました。

この頃はほかの欧州諸国でも感染が拡大していて規制が厳しくなっていました。けれども、この時点ではイギリスでは全国的な規制は行わず、地域別に分けて感染が広がっているところだけ厳しく対処するという姿勢だったのです。

政府の科学顧問はこの時点で全国的に2週間の「火消し」ロックダウンを導入すべきだと提案しましたが、政府は社会経済への影響を鑑みて、あえて専門家の意見と異なる施策を選びました。

けれど、その後も感染者数はうなぎ上りに増え続けました。地域によってはNHS国民医療サービスを圧迫することになる可能性があると予測されたところで、ジョンソン首相はつい数週間前に発表した自らの政策をくつがえして、全国的な規制を導入せざるを得なくなったのです。

ロックダウンNo.2の規制内容

ジョンソン首相は10月31日土曜夜に記者会見を開き、翌週木曜11月5日木曜日からイングランド全土にロックダウンを導入し、以下の規制について発表しました。

  • 教育や医療、日常必需品の買い物、外での運動以外、原則として外出禁止
  • 必需品以外の店舗、飲食店、レジャー・娯楽施設、ジムなどすべて閉鎖
  • 屋内や個人の庭で他の世帯との面会禁止
  • 結婚式も含み、集会は禁止(葬儀は人数制限付きで許可)
  • 原則として可能な限り在宅勤務
  • 屋外での運動(散歩、ジョギング、サイクリングなど)は推奨
  • 屋外で他の世帯の人一人(子連れも含む)面会可能

春のロックダウンと比べ小さな違いはいろいろありますが、一番大きいのは学校や大学が通常通り授業を継続すること、そして建設現場や製造業などは継続が許可されていることです。

他にも、春にはあいていなかったガーデンセンターやDIYショップなどは営業しています。業者が修理や清掃目的で個人宅に入ることも許可されています。春には公園内の子供の遊び場が閉ざされたり、ベンチに座れないようにテープが張ってあったりしましたが、今は利用できます。

また春のロックダウン時は、他の世帯の人との面会は一切禁止されていましたが、今回は屋外でなら他の世帯の人一人と会うこともできるし、「サポートバブル」として一人世帯がほかの世帯と面会できるとしています。これは一人暮らしの高齢者がその子供世帯と家族のように交流ができる制度で、春のロックダウン中に問題となった課題解決のために導入されたものです。

ロックダウンNo.2への反応は?

3月に突然始まったロックダウンは誰にとっても「初めて」の経験で、かなりの混乱がありました。

ロックダウン直前のスーパーで必需品の買いだめのようなこともあったし、一人暮らしの高齢者など誰にも会えないということで、不安や孤独を感じた人たちも多かったと聞きます。

コロナウィルスに感染しないだろうかということだけでも心配なのに、他の病気やけがをしても病院に行けないのではないかとか、普段なら頼れるはずの自治体やチャリティーのサポートも受けられないなど、精神的につらい思いをした人も多いはずです。

今回のロックダウンは春に比べると規制が少し緩いこともあるし、期間が1か月と限定されていること、またロックダウンも2回目で慣れてもいるせいか皆、わりに落ち着いているようです。

買い占めなども起きなかったようだし、ロックダウン前後で生活ががらっと変わったという印象はあまりありません。

もちろん、ロックダウンで営業禁止になった店舗や飲食店・サービス業の人たちにとっては大きな変化でしょう。春のロックダウンが解除され、やっと元通り営業していたのがまた元の木阿弥なのですから。

けれども、ロックダウンNo.2の発表と同時に、春のロックダウンと同様、働けなくなった従業員の給与の8割を政府が補償すると約束されたので、当面雇用の心配はなく休めるということで混乱も少なかったようです。

自営業の人についても、通常利益の8割が補償されるということで、これも春の休業補償制度と同様です。

しかも、この休業補償は来年の3月まで継続するというので、もしかしてロックダウンは1か月どころかもっと長く続く可能性があるのかと勘繰りたくもなります。それもこれも感染や重症者・死亡者の推移次第ということでしょう。

とりあえずはこの1か月を何とか乗り切って、クリスマスには家族で集まってお祝いしたいというのがみんなの希望といったところです。

ロックダウン下のイギリスの状況

ロックダウンNo.2が始まり1週間が過ぎたわけですが、今回はあまりその前と変わりが感じられないというのが正直な感想です。

春のロックダウン中は街には人影がなく、車の音も聞こえなくなり、シーンとした中に鳥のさえずりが聞こえて不思議な気がしたものです。

今回は、学校の送り迎えをする人がいるので人通りもあるし、車の交通量も結構あるようです。

建設や製造業をはじめ、通常通り職場に行く人も少なくないのでしょう。うちの近所に高齢者介護施設が建設されているのですが、そこから毎日のように建設現場の工事音が聞こえてきます。

 

Construction

 

スーパーマーケットや郵便局、銀行、コンビニなどに行っても通常通りというほどではありませんが、マスクをした客がかなりいます。

朝の散歩に出かけると、同じように散歩をしている人、ジョギングをする人、学校や職場に通う人と出会います。

春のロックダウン中には閉まっていたお店でも、飲食店ならテイクアウトだけはやるなど、部分的に営業しているところもあります。

なじみのベーグル屋も春のロックダウン中は休業補償があるからと店を閉めましたが、今回は従業員にだけ給与補償を使って休んでもらい、店主と家族だけで営業を続けることにしたと言っていました。

みんな「どうしたらいいの?」とわからないことだらけで不安だった春に比べると、こわがってばかりいても仕方がないとばかり、ロックダウンを淡々と受け止めているようです。何事も経験ですね。

また、イギリスでは感染者数が増えていると言っても検査数もかなり増えているということもあります。一般人対象のPCR検査は一応症状のある人だけということになっていますが、わりに簡単に無料で受けることができます。

さらに、感染者数が多いのに比べ、重症者や死者数は春に比べるとそれほどでもありません。病院でも新型コロナウィルス患者への治療方法に慣れ、効果的な対応ができるようになっているのでしょう。

とはいえ、もちろん重症や死に至る人はいるし、数日前にイギリスでのコロナによる累計死者数が5万人というマイルストーンを超えたことが話題になりました。

これからどうなる?

コロナ研究で信頼されているインペリアルカレッジ3月16日の論文によると、ロックダウンで感染者数が減ったあとは規制を緩和できるが、そうするとまた感染が増えるということはすでに予測されていました。

その論文では、効果的なワクチンが開発され出回る、少なくとも18か月以上の間、緩和と規制のサイクルを繰り返すということが推奨されていました。詳しくは4月に書いた記事をごらんください。

https://globalpea.com/corona-3

とはいえ、イギリスだけでなくヨーロッパ中で夏の間に感染者数が減り、ロックダウンが解除され、人々が元通りの生活に戻って外出したりホリデーに出かけたりして、国の政策も世の中の雰囲気も「コロナはもう終わった、元の生活に戻ろう」というようになっていました。

私も、上記の論文を理解していたはずなのですが、希望的感情のほうがまさっていたのでしょう、このまま元通りの生活に戻れるのかもしれないと思い始めていました。

でもやっぱり、ことはそう簡単にはいかなかったのです。「そうらね、言ったでしょう。」と理性を持つ自分が感情で揺れ動く自分を戒めているようです。

実はこの経験は初めてではありません。新型コロナウィルスがイギリスではまだ「中国で大変そう」とくらいしか理解されてなかった3月はじめに北イタリアでの大流行の話を聞いたときにも同じようなことを考えていたのを思い出しました。

イタリアで起こっているようなことがイギリスでも起こるかもしれないと予測できたはずなのに、そうなってほしくないという希望的観測のほうが強かったので、インペリアルカレッジの論文を読んでも「まさか、こんなことが起こることはないだろう」と半信半疑だったのです。

でもその後のイギリスはほぼあの論文通りの経過になっています。

ということは、やはりワクチンが出回るまでは規制と緩和の繰り返しサイクルになるのでしょうか。

ワクチンで春には元通り?

つい先日、ファイザー・Biontechが開発中のCovid-19ワクチンが効果的で副作用もなく、年末までに認可される予定だというニュースが入りました。もしワクチン開発と接種が順調にいけば、来年春頃には通常の生活に戻れる可能性もあるということで、うまく行ってほしいと願うばかりです。

とはいえ、そういう一筋の明るいニュースにすがるだけでなく、日々の感染対策を怠らず一日一日を過ごしていくことが大事だとも考えています。

幸い私は在宅で仕事ができるし、家族や友人もコロナにも感染せず元気で暮らせています。

日本に帰ったり旅行したり、友人と会ったりできないのは残念ですが、家族で一緒に過ごす時間が増えたし、散歩したり庭仕事したりといった楽しみで心豊かになれるのは幸運なことだと思います。

春のロックダウンと違って、だんだん寒くなり日が短くなるのは寂しいものですが、秋晴れの青い空に雁が渡るのを見上げるだけで今日もいい一日になりそうだと足取りが軽くなります。

Geese

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