コロナはいつ終わる?緊急事態宣言が出た日本とロックダウン中のイギリス

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Stay Home

日本でも新型コロナウイルスの感染により、東京など7都道府県を対象に緊急事態宣言が出ました。一足先に感染者と死者数が恐ろしいほど増加しているイギリスの様子について今の状況を報告します。イギリスで導入された準ロックダウン(都市封鎖)とはどういうものなのか、イギリス人はその対策に対してどのように対応しているのか現地からお伝えします。さらに、今日はこの状況が一体いつまで続くのかについても、専門家ではないながら私なりの知見を紹介します。そして、そのあとで日本がこれからどうなるのかについても考えてみます。

イギリスの準ロックダウン(都市封鎖)

どんな政策?

イギリスでは3月23日に準ロックダウンと言える政策が発表されました。イギリスのコロナ感染防止政策は中国やイタリアに導入された厳しい移動制限に比べれば緩やかな政策と言えます。

原則としてはStay at homeとSocial Distancing、すなはち外出を控え、やむを得ない外出の場合は社会的距離を保つというものです。

例外的に外出が許されているのは下記の場合です。

  • 食料品や医薬品など生活必需品の買い物
  • 1日1回の散歩、ジョギング、サイクリング、犬の散歩などの運動
  • 医療上、必要である場合

仕事は原則として在宅でするようにということで、例外として国民が日常生活を送る上で不可欠とされる仕事をする「キーワーカー」とされる人々だけ仕事に行くべきだとされています。

このキーワーカーは医療・介護、教育・保育、警察・消防救急、必需品運輸、必要なサービスを提供する公的機関などの分野で働いている人たちです。

さらに、3人以上の集会は避けるとか、店舗だけでなく図書館、公園などにある子どもの遊び場、屋外のジム、教会など宗教施設も閉鎖になりました。 結婚式や洗礼式も禁止され葬儀だけは許可されるということです。

これらはとりあえず3週間の措置とされ、その後状況をみながらこれを継続するかどうかを判断すると言っています。

閉まっている店や利用できないサービス

・飲食店(カフェ、レストラン、パブ、バーなど)
・文化施設(図書館、美術館、博物館など)
・学校(キーワーカーの子供は希望すれば行ける)
・スポーツジムやプールなどレジャー施設
・公園内の子供の遊び場

開いている店や利用できるサービス

・スーパーマーケット、食料品店、魚屋、肉屋、パン屋、銀行、郵便局など
・スーパーは2メートル距離を置いて並んで入り、高齢者やNHSスタッフ専用優先時間を設定している店も多い。
・公園は子どもの遊び場以外は開いている
・学校はキーワーカーの子供だけ行ける
・鉄道やバスはサービス減少運行
・ネットショッピング、宅配サービス、通販を利用する人が多い

イギリスのロックダウン達成率

イギリスではロックダウン発表後政府の度重なる「Stay at home, protect NHS, save lives」のキャンペーン(耳にタコができるほど聞いているので、全人口がすらすらと暗唱できるはず)のおかげか、外出する人はめっきり減りました。

ロックダウンが宣言された3月23日以降、在宅勤務は60%以上となっているとの調査結果が出ています。

交通機関の利用については、車両、徒歩、自転車交通量は3/4減り、鉄道旅行は90%、バスサービスは60%減ったということです。

生活物資その他の輸送は行われているため、大型輸送者車の減少は40%にとどまっています。道路交通量全体では3月末に73%減りました。

ロンドンだけを見ると、地下鉄利用が94%、バス利用は83%減少しています。

さらに、私は正直言って驚いたのですが、このロックダウン政策の支持率が政策導入後でイギリス国民の92%、ロックダウン直後だと93%に上るということです。

イギリスは長い冬が終わってようやく日が長くなり、陽気に誘われて外出したくなる時期です。私は少しでも太陽が出るとすぐに外出したがるイギリス人が家に閉じこもっているわけはないと思っていたのです。

そして天気のいい週末などロンドンなど都市部の公園では、人と人とのソーシャルディスタンスが推奨されている2メートル取れないほどの人出となることもあったそうです。そういうときには警官がパトロールして注意していたようです。

そういう「警告すべき」出来事があるたびに、メディアでも取り上げられたり、政府の毎日の会見やメディア、SNS、ポスターなどを通じての度重なる注意もあり、ほとんどのイギリス国民はロックダウンルールにお行儀よく従っているようなのです。

さて、3月23日に導入されたロックダウンは3週間後に見直すとされていたので、4月13日がその期限となります。これを書いている4月12日現在、イギリスはまだ感染拡大のピークに達したとは見られません。そのため、外出制限の緩和を正当化する根拠はなく、この政策はさらに数週間延長される可能性が高いと言えます。

コロナロックダウン政策支持の理由

ある調査によるとロックダウンのルールを破る国民を警察が逮捕したり罰金を課したりすべきかという質問にYESと答えた人は83%、NOと答えた人は16%だったという結果があります。警察はルールを破る人に罰金を課す権限を与えられてはいますが、今のところは注意をするだけで終わっているようです。

イギリス人が政府のロックダウン政策を支持しているのは、毎日のように増えている感染者数と死亡者数を目のあたりにして危機感があるからでしょう。

ここまで危機感が高まっていなかったロックダウン導入前後も、政府が従業員給与や自営業者の平均収入の80%を補償すると発表したために、店舗やサービスもビジネスを停止するのに抵抗が少なかったのもあります。

さらに、ジョンソン首相をはじめとする政府への信頼感があるのだと思います。

イギリスでは新型コロナウイルスについて毎日夕方5時に閣僚の誰かと科学顧問や医療関係者などを伴った記者会見があり、テレビなどで放映されています。会見では感染状況や死者数などの情報、コロナ政策の発表、経済的な援助の約束、国民への要請などが語られ、オンラインでリモートに質問する報道陣の質問に答えています。

質問するメディア記者は政治家への忖度などなく鋭い質問を次々にぶつけるので、時には閣僚が答えに窮することもありますが、用意された文書を読み上げるのではなく、自分の声で真摯に答えている姿勢が見て取れます。

会見では、日本では一般国民にははっきりと言わないのではないかと思われるような冷酷な事実(予測される死者数など)や専門家の科学的な見解なども隠さず明らかにされ、日々透明感のある、オープンな情報を得ているという安心感が得られます。

さらに、ジョンソン首相はコロナに感染して入院する前にイギリス中の全家庭にコロナに関するリーフレットを同封した手紙を郵便で届けました。

また、エリザベス女王が国民に「共にコロナに立ち向かおう」と語った特別スピーチがテレビなどで広く放映されました。コンピューターやスマホを持たない高齢者にとっては、こういったメッセージが精神的な支えになったと思われます。

ほかにも、毎週木曜日夜の8時に国民全員がNHS医療スタッフに感謝して拍手をするのは、医療スタッフをヒーローとして称えるだけでなく、自宅隔離する人々が玄関先や窓辺から近所の人々とあいさつする機会を与える行事となっています。

まさに挙国一致でイギリス中が心を合わせている様子は、私にとっては映画や小説でだけ知っている、戦時中のような雰囲気です。まさか、自分が生きているうちにこういう経験をするとは思っていませんでした。

コロナ騒ぎはいつまで続く

それにしても、このコロナ騒動、いつまで続くのでしょうか。

イギリスではインペリアル・カレッジ・ロンドンの専門家チームが政府にアドバイスをしていますが、政府のコロナ対策のベースになっている報告書を見てみましょう。

インペリアルカレッジ論文

インペリアルカレッジ大学が3月16日に発表した論文に「このまま何もコロナ対策を取らなかった場合、イギリスでは8月までに約51万人が死亡する」と予測されています。

抑制政策として「社会距離、感染者とその家族の隔離、学校閉鎖などの抑制対策を取れば、死者を8700~3万9000人にとどめられる可能性がある」とあります。この場合の条件として社会的な接触を減らす割合は75%とされています。(ちなみにイギリスの全人口は6665万人なので日本の半分強)

このような政策を導入することで、感染者数は減りますが、それは一時的なもので、そこで隔離政策などをやめたら、感染者数はまた増えるということです。
結局、この対策は有効なワクチンが開発される18か月かそれ以上の間維持されなければならないのです。(ほかに、奇跡的な新薬でも発見されない限りは)

その期間ずっと厳しい対策をし続けるというのは社会的にも経済的にも受け入れがたいものであるでしょう。それで、この論文では感染者数が減ったところで対策を部分的に緩和し、感染が再び広がった時にまた厳しくするというサイクルを繰り返すということを推奨しています。

こちらのグラフをご覧ください。

Imperial College Covid-19

 

このグラフの縦軸はICUすなはち人工呼吸器などを備えた集中治療ベッドが必要な重症患者の数を表します。

青い線が社会距離、学校閉鎖、感染者の隔離などの抑制政策(すなはち準ロックダウン状態)を導入する期間です。

オレンジ色の重症ケースが減ったところ、7月20日くらいでいったんこの政策を部分的に緩和する、たとえば学校を再開し、外出を許可するが、感染者隔離は続けるというように緩めます。

全期間のうち2/3くらいは厳しい抑制政策が続き、1/3は緩い期間をはさむということを繰り返すのです。これで既存の医療システムで重症者を充分にケアできる態勢を維持して時間を稼ぎます。

このようにして、そのうち集団免疫ができるか、効果的なワクチンや何らかの新薬・治療法・予防法が開発されるのを待つしかないのです。これではやはり、収束までに2年はかかるということになります。

日本の人だと「2年もかかるの?」とびっくりする人もいるかもしれませんね。

もっと早く収束するのではないかという声も聞こえてきそうです。

実は、このインペリアルカレッジの研究だけではなく、他にも様々な研究が発表されており、異なる意見が見られるのも事実です。

ハンマーとダンス

Hammer and Dance

たとえば「ハンマーとダンス」と名付けられたモデリングは、インペリアルカレッジの抑制政策を踏襲しつつも、厳しい対策(ハンマー)をする期間は3-7週間で十分であり、そのあとはワクチンが開発されるまで緩やかな状態(ダンス)期間が続くのであり、そのまま感染を封じ込めることができるといいます。

けれどもこのセオリーは中国や韓国での事例をもとにしています。

中国がかなり強いハンマーを使ったことはご存じですよね。それは道路を文字通り封鎖して、武漢に住む住民を室内に閉じ込め決して外出を許さないといったものでした。それに中国政府は情報をすべて公開しているのかわからないところもあり、実際のところはどうなのか100%信頼できないというのが実情です。

それに対して、韓国の場合は民主主義国家でもあるし、その画期的なコロナ対応策はWHOや欧米諸国からは模範例として賞賛されています。

韓国が使ったのはハンマーではありませんが、徹底的に検査して追跡・隔離するという意味では同じことかもしれません。感染の可能性がある人を幅広く検査し、陽性の場合はすぐに隔離し、感染者と接触があった人々を徹底的にクラスター追跡、検査して必要ならまた隔離という方法を取ることで、感染のリンクを断ち切ることに成功しているのです。このためには大量の検査を行うための検査キットや施設、それに要する技術、医療スタッフも必要となります。
韓国はAIを駆使して性能のいいPCR検査キットを開発したことでこのような大量検査が可能でしたが、短期間の間にそこまでの検査体制を整備できる国は限られています。

さらに韓国では感染者の個人情報、たとえば年齢・性別・職場・およその住所・利用した店舗・移動に利用した交通機関と言ったデータが一般に公開されることになっています。名前は伏せられ代わりに番号が割り振られてはいますが、ここまで個人情報が公開されてしまうと個人の特定はたやすくできてしまうようです。

中国でもこのように個人情報を利用してコロナ対策を行っていると聞きます。それどころか、中国では町中に置かれた監視カメラで顔認識による追跡まで行われているそうなので、ビッグブラザーの世界と言ってもいいでしょう、これはコロナ対策に限ったことではないでしょうが。

ここで私たちが考えてしまうのは、いくら感染症の拡大を防ぐためとはいえ、ここまで個人情報を公開することを私たちは許すことができるかということです。
個人の権利やプライバシーの保護を優先する欧米諸国ではこのような方法を導入するのはやはり難しいと言えるでしょう。

となると、結局インペリアル大学のモデリングが実情に合っているようには思えます。ということは、やはり2年もかかってしまうということなのでしょう、奇跡が起きない限り。

日本ではどうなるのか

数週間で収束?

さて、ここで日本の話にうつります。

日本では非常事態宣言が出た際に「人の移動を80%減らせばコロナ感染を2週間で収束する」と言われました。

この仮定には2点疑問が残ります。

まず、本当に人の移動が80%に減るのかということ。それから、もし移動を80%に減らせたとして、そうすると本当に感染を2週間で収束でき、その後も再感染爆発がないままで終わるのかということです。

移動を80%減らす

Googleのデータによると、日本で外出自粛要請が出た3月26日以降、在宅勤務はわずか9%に過ぎなかったという結果が出ています。

また、交通機関の利用率の減少は40%程度でした。

今回は自粛要請より強い緊急事態宣言ですし、安倍首相と専門家会議の尾身教授の記者会見でのメッセージもわかりやすく国民にも届いたことと思います。

けれども、日本の緊急事態宣言は外国のロックダウンとは異なり、公共交通機関などは維持し外出自粛を要請することで『密閉』、『密集』、『密接』の3つの密を防ぐとしています。

重要なことは国民の行動を変えることであり、接触機会を7~8割減らすことで2週間後に感染者の増加をピークアウトさせ効果を見極める期間も含めて1か月としています。

けれども、この行動自粛で経営が成り立たなくなった事業者や失業の憂き目にあう人たちへの補償が約束されていないことで不安の声が強く上がっています。

1世帯に30万円の現金給付の発表もありましたが、申請制となっており、収入が半減した場合のみというように条件が厳しすぎるという声もあります。やむを得ず、こっそり店舗を開けたりサービスを提供するビジネスが出ると、政策の実効性がなくなってしまいます。

さらに、心配なのは都会から地方への人の移動です。

「緊急事態宣言」が出されたのは。東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡と言った都市部が対象です。これらの地域は新型コロナウイルスの感染が広がっているところでもあります。コロナ感染を避けるため、または仕事を失ったり事業が立ち行かなくなった結果、これらの都府県から他の地方に移住したりする人が増える可能性があります。
それらの中には気が付かないまま新型コロナウイルスに感染している人がいるかもしれず、そのような人が移住した先の地方で地元民にウイルスを広めてしまう可能性が出てきます。

地方の医療体制は手薄なところも多く、高齢者が多いのも心配です。都会から実家に里帰りした若者が親や祖父母にウイルスをうつしてしまうことだってあるかもしれないのです。公共交通機関を維持する限りはそういう個人を止めることはできません。

感染が減った後持続できるか?

非常事態宣言の効力は4月7日から5月6日の1か月間です。移動を80%に減らせたとして、そうすると本当に2週間で効果が表れ、その後も再感染爆発がないままで終わるのかということです。

イギリスのインペリアルカレッジのモデリングでは、日本の緊急事態宣言より強いロックダウン政策をとるイギリスの場合でも初期に3か月以上の抑圧政策で感染者を減らしたとしても、政策を緩和したらまた感染は広がると予測しています。

日本でそれをそのまま封じ込めるということが可能なのかどうかが疑問です。今は感染のクラスターが多すぎで無理だけれど、いったん感染者数が少なくなれば、専門家会議がやって来たクラスター対策で封じ込めることができるという予測なのでしょうか。

そうだとしても、全国各地にクラスターが発生した場合、すべてに対応しきれるのかどうかが不安です。

日本は欧米と異なり大丈夫?

日本は感染者数も死者数も少ない

新型コロナウイルス感染に関しては、「日本では米国や欧州の惨状と比べて感染者数も死者数もはるかに少ない、日本は新型コロナ対策に成功している」と楽観視する向きが強いように思えます。

しかし新型コロナの威力を目の当たりにしているイギリス在住者からすると、それにはいささか不安を感じます。

というのも、私もイギリスでここまで感染が広がり死者数が増えるとは想像できなかったのです。北イタリアの医療崩壊のニュースを聞き、「イギリスはイタリアの2~3週間後を追っている」という予測を耳にしていたのにもかかわらず。

イギリスでコロナによる初めての死者が出たのは3月5日、つい1か月少し前のことです。それからあれよあれよという間に予測通りになっているのがまさに津波が襲うのを見ているようです。津波の予報は聞いていたはずなのに。人間というものはあまりにも悲観的な予測を信じたくないというようにできているのかもしれません。

日本も、もしかしたら3週間ほど前のイギリスと同じ状況なのかもしれないと不安に思っています。

日本はコロナ感染者が本当に少ない?

日本ではダイアモンドプリンセス号が話題になった頃、まだ欧米ではコロナが対岸の火事だった時期から感染者がいたわけですが、それから爆発的に数が増えたわけではないようです。感染者数の国際比較を見ても日本の感染者数のグラフは絶対数が少ないだけでなく、そのカーブも緩やかです。

そのデータが他の国のデータと異なることもあり、諸外国では日本は新型コロナウイルスの検査をあまりしていないために陽性者が少ないのであって、日本の場合は感染者数というよりは感染確認者数であるという暗黙の了解があるようでした。

その背景にはやはり東京五輪があり、五輪を予定通り開催するために感染者数を多く見積もりたくないのだろうと思われている節があるのです
(これは私の意見や邪推ではなく、それが外国から見た日本についての一般的な見解であるということです、あまり公には語られませんが。)

このことに関してはダイアモンドプリンセス号の検疫対策における不手際も多少関係しているでしょうが、それにも増して日本政府やメディアの情報が100%信頼されていないことも影響しています。過去の様々な出来事(福島原発、厚労省の雇用データなど)や今現在も日本国内で批判の元になっている政府の諸「問題」についてなど、日本について少し詳しい人なら知られてしまっているからです。

東京五輪が延期になったとたんに感染者数(検査陽性者数)が増え、東京知事がコロナに対する警戒を口にするようになり、首相が緊急事態宣言を出したのが単なる偶然であったにせよ、「そうらね」と思う声がささやかれているのが残念です。

重症者や死亡数も少ない

日本では検査をしていないだけで、本当は感染者数がもっと多いということについてはほとんどの人がそう思っているでしょう。これは何も日本に限ったことではなく、イギリスや米国を含め、これまで検査をあまりしてこなかった国ではみんな同じです。

ただ、日本では感染者数だけでなく、コロナによって死亡した人の数も少なく抑えられています。中には肺炎など他の病因と混同されている場合もあるかもしれませんが、死亡者数についてはほとんど実際の数字と考えてもいいでしょう。

この理由については様々な仮説が立てられています。

まず、日本のクラスター対策が最初のうちはうまくいっていたことがあげられるでしょう。これには北海道の雪まつりの時に発生したクラスターを封じ込めることに成功した事例があります。

さらには日本人の衛生観念、マスクの着用、キス、ハグ、握手と言った接触を避ける生活習慣もあるのかもしれません。

さらには、エビデンスは乏しいのですが、すでに早い時期に集団免疫ができているという説もあります。これは、中国からの訪問者が多い日本には、すでに早い時期にコロナウイルスが広まっており、多くの人が感染しているため集団免疫ができてこれ以上感染しないというものです。

また、BCG接種によって新型コロナウイルスに感染しても重症化しないという仮説もありますが、これも今のところは証明されているわけではありません。もしそうだったとしたら日本やロシアはラッキーだったということになるわけですが。

けれども、そういう立証されていない仮説は希望的観測にしかすぎず、そのために楽観的になってリスクに盲目的になってしまうのは怖いことです。

遅れているだけかも?

日本では、感染の広がりが単に遅れているだけで、これから欧米のように爆発的に感染が広まる、または重症者が出る可能性もあるのです。

今の死者数のカーブはイタリアの初期のカーブに似ているとも言われています。イギリスも3週間前にイタリアの3週間後をたどっていると言われていたのに、その時はピンとこなかったのが、今事実になっているのだし。

さらに、中国で始まったウイルスが欧米に渡った際に変異して、より強力なものになったことも考えられます。そして、そのより強力なウイルスが今は欧米から日本に入っているという可能性もあります。

集団免疫でもBCGでも理由は何であれ、日本が守られていることを切に願いますが、もしただ単に感染の爆発、あるいは重症化が遅れているだけだとしたら、東京などの都市部では手遅れにならないようにするのに時間はありません。備えあれば憂いなしです。

諸外国が危機に瀕している様子を見ている間に、起こるかもしれない感染爆発の準備を着実に進めておくことが必要になっているのではないでしょうか。具体的には病院の役割分担を決める、医療スタッフの防護服やICU、人工呼吸器、臨時病床の準備、院内感染予防策などです。

たとえば、人口約1400万人の東京都と人口約2000万人のニューヨーク州を比べてみましょう。

新型コロナ患者を受け入れ可能な病床数は、ニューヨークでは合計5万3000ベッド、うちICUが 3000ベッドあります。それが今現在ほぼ埋まって、人工呼吸器も足りなくなりそうな状況です。一方で東京都のICUは700ベッド程度しかないと聞いています。

これでは、重症者が一度にたくさん出たらそのすべてを受け入れることができなくなるかもしれません。すでに現場の医師たちは医療崩壊の可能性を警告しているのです。

地方でのクラスター対策

先ほど言ったように、日本で行われてきたクラスター対策は感染者数が少ないうちは効果的です。でも東京都など、感染経路がわからない感染者数が多発している今となっては、もはやなすすべはありません。速やかにプランBに切り替えて抑圧政策に移行するべきです。

とはいえ、今現在感染者数を低く抑えられている地方ではまだこのクラスター対策が有効かもしれません。

けれども、その方法で感染拡大を防ぐためには様々な条件が必要となってきます。まず、都会など外部からその地域に感染者が移動してこないこと。または移動してきた場合に何らかの検疫措置を取ること。

でも、国内での人の流れを阻止することは難しいでしょう。新幹線をはじめとする公共交通機関も道路も閉鎖するわけにはいかないのですから。緊急事態宣言が出るとそれ以外の地方に人が移動するのは、イタリアでも見られた傾向です。

都会にいる人は安全なところに行きたいし、田舎にいる親は都会にいる子供に戻ってきてほしいと思うものでしょうし。

次には、高齢者が多く、医療体制が脆弱な地方で重症化する患者を出さないために、日本全国各地でクラスター対策を行う必要があります。

これは県単位でするのがいいのでしょうが、各自治体に検査、追跡、感染ルート確認、感染者隔離といった対策を行う人材や知識と経験、組織や機関が整っているのかどうかにかかってきます。

それぞれの自治体でしっかりと準備をすることでその地域の感染爆発を封じ込めることができるので、ぜひ努力していただきたいものだと思います。

コロナと共に生きていく方法

さて、ここまで聞いて何だかひどく悲観的な考え方だと思われたかもしれません。けれども、少なくともイギリスでは、そして多くの欧米諸国ではもはやこういう状況なのです。

今のピークを一時的に抑えたあと、少し封鎖を緩めることはあっても、完全に解除はしない可能性が高いでしょう。

すでにロックダウンを解いて通常の生活に戻るかに見える中国でも、感染の再爆発について注意しながらといった状況だと思います。

各国で、効果的なワクチンや新薬、治療法が開発されるまでの長期戦が始まったばかりと言えます。ワクチンが開発されるのには18か月から2年はかかると言われているし、できたとしても副作用はないのかなどのテストも必要になってきます。

何らかの理由で幸運にも日本で感染の拡大を食い止められるとしても、日本以外の多くの国でこれだけの被害が出ている以上、国際的な不景気は避けられません。輸出入に大きく頼る日本経済も影響を受けないことはあり得ないでしょう。

航空業界や観光業などはすでに倒産寸前まで来ている企業が多いでしょうが、これからそのような状況におちいる企業はたくさん出るはずです。

なので、私たちは少なくとも数年はコロナと共に生きていく方法を考えなければなりません。その世界で生き残るには、国も企業も人も変化しなければならないでしょう。

たとえば、インバウンド観光に頼っていた企業は地元民に対する介護などのサービスに変換したり、移住者を引き寄せるためのビジネスを起こしたり。飲食業者はデリバリーサービスや医療介護分野に進出するという方法もあります。

さらにあらゆる分野でデジタル化が進むでしょうし、インターネットでのマーケティング、ネットビジネス・シェアビジネスや通販、デジタル教育やインターネットレッスンといった業界に参入することも考えられます。

そして、考えようによってはコロナのおかげで社会がポジティブに変わる、いい契機になるかもしれません。

たとえば

  • 都会から地方への移住者が増える
  • リモートワークが普通になり、働き方改革が起こる → 少子化解消になる
  • 飛行機や自動車など交通量が減り大気汚染が改善され地球環境にプラスになる
  • 無駄な会議・社交が減り、ハンコ文化からデジタルになって業務上の能率化
  • 学校もリモートでの教育が普通になり、ネット授業やデジタルレッスンが広まる

これまで地方創生、働き方改革とかデジタル化、スマートシティなどと掛け声ばかりでなかなか進まなかった様々なアイディアや改革が一気に実現する可能性も秘めています。

そう思うとちょっとわくわくしますね。

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