少子化のもう一つの理由:痴漢被害

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Train

先日、少子化について若い女性の海外流出も少しは関係しているのではないかという話をしましたが、今回は満員電車などでの痴漢被害も少子化に影響を与えている可能性もあるのではということ。というのも、その実例を異なる二人の人から聞いたからです。

少子化の理由

先日、少子化について若い女性の海外流失も理由の一つになっているのかもしれないということについて書きましたが、それについて2人の女性から感想をいただきました。

1人は孫もいるという年齢の女性で、「結婚によって、私ではなく嫁という生き物になってから違和感を引きずり続けている」ということです。これまでは「一人の人間」であることを自覚すらできてなかったような気がしていたそうですが、今からでも自分らしく生きていきたいという言葉がすてきだなと思いました。

もう一人の女性は「実は私も日本の少子化の一因となっているんです」と告白してくれました。東京一人暮らしで、結婚もせず恋人さえもできずこのままずっと一人で生きていくつもりだそうです。その理由に驚いたのですが、高校生の時の痴漢被害で男性不信になり、恋愛も難しくなり、特に体に触れられそうなシチュエーションになると苦痛になるということです。そういえばと思い出しましたが、同じような理由で独身をとおしている女性の話を友人から聞いたことがあるので、そんなに珍しいことではないのかもしれません。

痴漢被害がトラウマに

私は田舎育ちなので電車はがらがらで、痴漢にあったことがありません。なので、東京出身の友人が制服を着ていると電車で痴漢にあうのは日常茶飯事だったと話すのを聞いてびっくりしました。彼女たちによると、恥ずかしいし、いちいち報告もできないし、誰でも経験することだからと、そのままがまんすることが多いようです。そして、そのうち慣れるというか、たいしたことはないと思い込むようにすることで、やり過ごすということなのでしょう。

けれども、被害を受けた人の中には、この体験が長期的なトラウマとなってしまう人がいることも想像できます。そういう人たちはその後もずっと男性と自然に付き合うことができず、特に体に触れられそうになると嫌悪感が走ってこわばってしまうそうです。それで、実世界で男性と付き合うことはせず、好きなアイドルを追いかけて満足していたりします。

痴漢被害さえなければ、若い女性として普通に男性と恋愛して結婚、出産という人生を歩んだ人達もいるでしょう。痴漢が少子化にそれほど大きな影響を与えるとは思いませんが、全くないとも言い切れない要因であることは確かです。

BBCの痴漢動画ドキュメンタリー

ちょうど先日、イギリスBBCワールド・サービスは日本での痴漢の実態とともに、その様子を撮影した動画が中国などで売られている事実について調査取材をもとに製作した「痴漢動画の闇サイトを暴く 売られる性暴力」を公開しました。日本での「Chikan」被害がひどいということは国際的にも知れ渡っていて、イギリス政府の日本渡航における注意書きにもこの件について警告があります。けれども、痴漢動画が日本から中国や韓国などに「輸出」されビジネスとなっているということまでは知りませんでした。

そして、このドキュメンタリーで印象的だったのが、痴漢撲滅運動にかかわっている57歳の女性でした。自らも学生の時に痴漢被害にあったが、声を上げることができなかった。もしあの時自分が声を上げていたら、それから何十年もの間、若い女性が痴漢被害にあい続けることはなかったかもしれないというのです。

これについても、この春BBCが製作して話題になった、故ジャニー喜多川による性虐待のドキュメンタリーの話と同じことだと感じました。こういう被害を受けた人が沈黙したり、周りの人が見て見ぬふりをすることによって悪事が繰り返され、加害者が野放しになり、被害者が次々に生まれ続けるという構図です。

また、勇気をもって報告や告発をした人が警察などの公的機関、メディアなどに適切に取り上げてもらえず、深刻な問題が根本的に解決されないまま繰り返されてしまうということもゆゆしきことです。

痴漢問題解決のために

「chikan」がそのまま英語になるほど、国際的に知られるようになるような状況は異常。被害者も周りの乗客も勇気を持って通報し、公共交通機関や警察は厳格な対応をすることが必要です。さらに、体を接触せざるを得ないほど混雑した交通機関の緩和も考えたいところ。一極集中の緩和、リモートワークやフレキシブルワークなどワークライフバランスの導入なども検討するべき。

別の見方をすれば、女性専用車が必要になるほど日本で痴漢が常態化してしまっている状況は、ジェンダー後進国の表れとも言えます。イギリスで女性専用車の導入について議論されたとき、お払い箱になった理由は何だと思いますか?日本では、女性にだけ特権を認めるのは不公平だとか男性差別だとかいう声もありますが、そういう理由ではありません。

女性専用車両を設けるということは、そもそもそういう犯罪行為があることが仕方ないと認めることであり、対策をあきらめることであるという理由からです。女性が専用車両を利用するなどして行動を制限するのではなく、痴漢という犯罪行為そのものを取り締まるのだということをはっきりさせる必要があるのです。

また、男性がこういう犯罪を犯すものだと決めつけることは、男性にとっても侮辱的。性犯罪は男性の本能や衝動によって起こるものではなく、女性を蔑視し性的なモノ化したり、自らの力を誇示したいという誤った考えに基づいて行われるもの。そのような犯罪を犯すものは正しく罪を償わせ、更生されるべきであるというのです。

言い換えれば、痴漢という行為が日本にこれだけ蔓延している背景には、ジェンダー後進国である日本社会に性差別や女性蔑視があるということ。「女性は男性に仕えるべきである」という考えがあり、弱い立場の女性を自分のパワーのもとにおきたいという欲望が根底にあるからなのです。男性平社員が上司である女性に痴漢行為をするかどうかを考えると、わかるのではないでしょうか。

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