イギリスで家を売る:決め手は藤棚

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DIYも終わった我が家を再度広告に出すと、すぐに買い手が付きました。慣れないペンキ塗りのかいがあったのかとも思いましたが、決め手は庭の藤棚だったようです。イギリスは今、庭も公園も野原も美しい季節。連日の快晴も手伝って足がつい戸外に向き、朝食、ランチ、夕食まで庭で楽しんでいます。

我が家を売る話

先日我が家を売るためにDIYに精を出している話をしました。

そもそも最初は冬の2月に家を売ることにして、その時に買い手がついたときに手作りジャムが決めてだったという話も。

ペンキ塗りも一段落して今一度家を売りに出すことにし、不動産屋に連絡。今回はちゃんと「売り家」の看板もつけようということになったのですが、看板が付く前、最初の週に4組が家を見に来ました。

見に来た人たちは、家自体はもちろんですが、庭も気にいったようです。DIYをする前の家の状態は見ていないわけなので、ペンキ塗り自体に効果があったのかどうかはよくわかりません。家を売るとなるとこれくらいのことは普通でしょうから、マイナスがゼロになったくらいなのかも。

けれども、庭は大きいのもさることながら、緑や色とりどりの花が咲き始める時期なので、目を引くことは確実。2月に売りに出した時は、常緑の椿や初春のささやかな緑しかなくて、それでもその庭がどういうものなのかを理解してオファーをくれた人はいました。でも、普通の人にとってはただ大きいということしかわからなかったでしょう。

5月の庭は緑したたる光景でたくさんの花も次々に咲いてきているので、誰の目にとっても魅力的に映ります。その中でもパーゴラに這わせた藤が咲き始めていて、あと1週間もすれば見どころになるタイミングでした。ガーデニングには興味がなくて、植栽を取っ払って芝生にするつもりだという人達もいましたが、藤棚を見ると、これだけは残したいと言っていました。

藤棚が満開

我が家の藤は家を買ってすぐに植えたので15歳です。最初から藤棚をつくろうと思い、そのために花房の長い種類のものにしようと決めて、園芸店でこれはと思う苗を2つ買いました。パーゴラの両脇に植えて、半分ずつ棚を覆ってくれたらと思ったのですが、なぜか一つだけ元気に育ち、もう一つは小さいまま、生きてはいるけど育たなかったのです。大きいほうの苗は大きくなり3年目くらいに花が咲き始めて、年々棚を覆っていき、ついに全部覆う10年目くらいになって、なぜか突然もう一つの藤も育ち始めました。

今では毎年5月中旬になると香り高い花房が上から垂れ下がり、その下にたたずむと至福のひと時。2月に家が売れたと思ったときは今年は藤を見ることもできないかもしれないと思い、剪定や誘因をさぼってしまいましたが、それでもきれいな花を咲かせてくれました。そろそろ最盛期が過ぎて散り始めていますが、この間2週間ほどは堪能できました。

買い手のオファー

最初の週に家を見に来た4組のうち3組がもう一度家を見せてくれといい、ほかの家族メンバー、中には改築するための業者を連れて来ました。そして、その3組がそれぞれ家を買いたいというオファーをしたのです。そのうちの一つに決め、今は買い手のローンや書類手続きの段階に入っています。藤が満開になる1~2週間前だったので、本当はもう少し長い間、広告を出したままにしてほかの人にも見てもらいたかったのですが、不動産屋にそれはしないほうがいいと言われ、広告は取り下げました。

この人たちに売りたいと決めたのは小学生の男の子2人がいる40代初めくらいの夫婦で、そのお母さんのお母さんやおばあちゃんも家を見に来て、仲のいい家族といった印象を受けました。みんな、まだ2分咲きくらいだった藤棚に見とれていました。男の子たちはうちの息子が残していったサッカーボールを蹴って芝生で遊んでいましたが。うちの息子がそうだったように彼らもそのうち「庭の花壇をつぶしてサッカー用の芝生を大きくしてよ」と言い出すのかも。

この家で最後の夏

冬に家を売りに出して買い手が付いた時は、この夏はもうこの家にいないかもと思い、春には野菜の種まきもせず、庭も世話を怠っていました。その買い手が健康上の理由でオファーを取り下げた後は、家内部のDIYで忙しくやはり庭はほったらかしに。

でも、最近は気候もいいし、何より次々に生まれてくる新緑や色とりどりの花が目を引いて足が外に向かいます。冬の間は毎日の散歩を日課にしていましたが、最近は庭を歩き回ることが多くなりました。野菜の種まきはしませんでしたが、ほったらかしでも毎年出てくるアスパラガスやワイルドガーリック、ルバーブはありがたく収穫してご飯のお供にしています。

そろそろいちごも色づき始めてきたし、ベリーやカラントも実を付けています。今年は最後のジャム作りもできそう。りんごや梨も実をつけているけど、その収穫まではいられないかな。春の花が終わった低木は剪定しないといけないし、咲き始めたバラやアイリスも花がら摘みをしなくては。それにとにかく雑草が生えてくるので草取りも欠かせない季節。冬の間にコンポストもうまい具合に堆肥化したので、それを畑や花壇にまきたい。

ほかの人の手に渡ってしまう庭、サッカーのための芝生にすべく引っこ抜かれてしまうかもしれない花壇を、それでもせっせと手入れしている週末。庭仕事はきれいな花を咲かせたり収穫できる野菜や果実を育てたりするためにしているところもあるものの、やはり私は大きな空の下で植物や土やミミズにまみれながら庭いじりをするのが好きなのだなと実感しています。

Even if I knew that tomorrow the world would go to pieces, I would still plant my apple tree.

たとえ明日、世界が滅亡するとわかっていても、私はリンゴの木を植える」ルター

 

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