自治体女性職員:非正規雇用女性に頼る日本/専門職正規雇用のイギリス

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Flexible woking

3月8日の国際女性デーにあたり、日本でも女性に関する記事が目につきましたが、今年は特に非正規雇用で働く女性に関する話題が気になりました。民間もですが、公的機関、特に地方自治体の仕事が非正規雇用の女性に支えられている、と言うと聞こえはいいですが「搾取されている」といっていいような現状があります。比較のために、イギリスでの自治体の女性雇用状況について紹介します。

女性の非正規雇用

国際女性デーで取り上げられた女性に関する問題は多岐にわたります。先進国の中でジェンダー平等劣等生である日本にはさまざまな課題があるのですが、ここでは女性の雇用、特に非正規雇用で働く女性について取り上げます。

総務省による2022年の統計では、役員を除く雇用者5689万人のうち、非正規雇用で働く人は全国で2101万人です(正規雇用が3588万人)。そのうち男性669万人で、女性が1432万人と全体の68%をしめます。

男性の非正規雇用は65歳以上の男性が多いので、正規雇用を定年になった後の雇用らしいと分かります。けれども、女性の非正規雇用は45~54歳の層が373万人と最も多くなっています。非正規雇用の女性は、既婚や独身、パートや派遣など多様ですが、中高年女性の問題はそれほど取り上げられてこなかった印象です。

女性の非正規職員の収入は年間100万円未満が41.2%です。この収入ではそれだけで生計を立てることは難しいので、兼業主婦が多いらしいと推測します。家事育児介護など家庭での無償労働の上に、非正規で働く女性が多いのでしょう。「100万円の壁」などと呼ばれる、配偶者の扶養範囲内で家計を補っている女性が多いらしいことが推測されるし、そういう話はよく聞きます。

官製ワーキングプア

朝日新聞ではジェンダーを考えるための特集記事を掲載していますが、その中の「官製ワーキングプアの現実」という記事が印象的でした。女性の非正規雇用の中でも、独身やシングルマザーとして家計を担う女性の低収入と貧困について取り上げています。民間企業でも問題はありますが、地方自治体を始めとする公的機関の職場で苦しんでいる女性が多いという記事です。

保育士や看護師、図書館職員、子供相談員などはもともと女性が多いのですが、近年は正規公務員数の削減が進み、代わりに非正規職員が3倍になりました。その多くを女性が担っています。公務員の賃金格差は正規では男女差が少ないのですが、正規と非正規の格差は2倍以上あります。女性は経済的自立が必要ないとされ、専門的な仕事でも非正規、低賃金で業務を追わされてきたのです。地方自治体の福祉職や相談員など心身共にハードな仕事は、非合理で滅私奉公的な「やりがい搾取」ともいえる働きを強いられる非正規職の女性に支えられている現状です。

「本来はジェンダー格差を解消する旗振り役である自治体が、格差を作り出している。」

この官製ワーキングプアと呼ばれる問題を解消するためには、非正規を正規化し、女性の正規公務員を増やすことで女性が経済的自立できる場を提供することが必要です。若い女性の地方脱出が地方の高齢化過疎化のみならず、日本全体の少子化や人口減少を加速させていますが、それを少しでも食い止める取り組みのきっかけになるはずです。

イギリス自治体の雇用

日本以外の国での自治体雇用というのはどういうものなのでしょうか。私が知っている限りでは、イギリスの事例を紹介できます。イギリスの3つの地方自治体で都市計画家として15年間働いた経験から、自分自身と周りのイギリス人の状況についてお話しします。

まず、イギリスの自治体はおもに専門を生かした人材を雇用し、雇用時のジョブ・ディスクリプションに沿った専門性の高い業務を担当します。私の場合は都市計画ですが、大学の都市計画科で必要な課程を修了し、RTPI(英国国立都市計画協会)という国家資格所有が前提となります。シニアポジションとなるとその分野での経験が必須。

自治体ではそれ以外にも、例えば法律を専門とするポストなら弁護士、エンジニア部門はエンジニア資格、公衆衛生なら公衆衛生の資格といったように、それぞれの業務を担当するのに必要となる資格、大学などでの専門学習とその後の経験がある人材を適材適所で雇用します。このような一般職は原則として正規雇用であり、必要とされる専門分野の仕事をずっとまかされます。なので、どの部署にもその道のプロが長年の知識と経験を生かして仕事をこなしています。日本の自治体によくあるように、数年ごとに部署が変わり、総務、人事、会計などさまざまな業務をその都度担当するといったことはありません。

もちろん、それほど専門性が必要にならない業務や、短期、臨時、パートタイムの仕事もあるので、その場合は非正規雇用となることもあります。懐かしいなと思うのは、私が初めて就職した20年前には市役所にまだ「タイピング課」というのがあって、職員が手書きで書く文書をワープロ(死語かも?)でタイプしてくれていました。タイピング課には20台くらいのワープロがずらりと並び、女性職員がカチャカチャ仕事していました。それらの仕事も正規でしたが、今はなくなったはずです。

ロンドンなどの大都会は事情が少し異なりますが、地方に住んでいると自治体の地方公務員という職業は女性に好まれます。労働条件や出産育児休暇などが保障されているし、フレキシブルワークなどワークライフバランスについても理解があるからです。なので、イギリスの自治体職員には女性がかなり多いです。都市計画課では男性が少し多かったのですが、公衆衛生(日本の保健所のような業務を担当)とか教育、医療関係は女性の比率が高い傾向です。課長や部長クラスも女性が増えつつあるし、公的機関は政府も教育機関も含め、民間に先駆けて女性推進に力を入れています。まさに、ジェンダー格差解消の旗振り役をしているわけです。

私自身の経験では、自治体の都市計画課でフルタイムの都市計画家として働いている途中に妊娠し、1年の出産育児休暇を取得。その後職場復帰する際にワークライフバランス制度を利用して週4日勤務、うち1日はリモートワークという形態を許可してもらいました。コロナのおかげで今ではリモートワークも普通になりましたが、当時はそれほどいきわたっていなかったので、自治体で働いていているからこその恩恵だと感じました。

1年も休暇を取られたら業務が回らないではないかという意見もあるとは思いますが、そういうケースでは9か月とか1年とかの期限付きの臨時募集で代わりの人を雇うこともあります。新卒一括採用がないイギリスでは、これを利用して卒業後最初の仕事を得る人も多いのです。その経験を生かして正規雇用へのキャリアアップにつなげることが可能になります。

地域のまちづくり

私が働いた都市計画課では、その地域に長く住んで働き、担当する地区や分野を知り尽くし、地方議員や地元企業、NPOなどのステークホルダーとの関係も深い都市計画家がいました。そのため、街づくりをする上で長期的な視点で取り組むことができていました。どの分野でも専門知識を身に付けたその道のプロが担当するのが当たり前ですが、特に街づくりという業務はそれが欠かせないし、数年ごとで担当が代わるような方法では長期的な視点が保てません。

その地域のマスタープランを10年20年といったスパンで考え、それについて一般市民に広く知らせたり、意見を募集したり、各地でコミュニティ集会を開いて意見交換をしたりするのですから、専門性ももちろんですが、住民以上にその街についての知識があることが必須条件になるのです。

日本でも、自治体におけるまちづくりというポストは正規雇用で長年その道のプロとなる人を育てていくようにすると、長期的な視点での地域計画が可能になるでしょう。そして、そのようなポストに女性を積極的に採用してもらいたいものです。街に住む住民の半分以上が女性なのですから。

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