イギリス大学生の住宅事情と不動産売買

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Uni Hall Residence

2022年9月に大学に入った子供、初年度は寮で暮らしていますが、2年目からは寮を出て自分で住むところを探さなければなりません。そのための家探しが家の購入につながりそうな気配。また、今私たちが住んでいる家も売ろうということになって、いろいろ多忙な毎日です。イギリスではどのように家の売買をするのかについて書いてみます。

イギリスの大学寮

イギリスの大学では、大学側が学生寮を提供しているところが多いです。敷地が広い大学ではキャンパス内に寮があり、そこから歩いて行ける距離ですが、敷地がせまいところだと、少し離れたところに寮があって、そこからバスや自転車で通うことも。息子が通う大学キャンパスは比較的広い敷地にあり、自然に囲まれキツネも出てくるという林を見下ろす場所に寮があります。

とはいえ、学生寮は室数が限られていて、すべての学生を入れることはできません。通常は初年度の学生を優先して受け付け、2年生以上になると自力で他に住むところを見つけるということになります。学生寮には食事付きのところもありますが、共同キッチン付きの自炊のところもあり、さまざまなタイプから選べるようになっています。

息子が入った寮はベッドと机のある個室、バス・トイレはもう一人の学生とシェア、キッチンとダイニングルームを8人でシェアするというタイプ。キッチンには調理施設、冷凍冷蔵庫、収納キャビネットなどが備え付けられ、鍋や皿、カトラリーなどは各自が用意します。

引っ越しを手伝うときに寮の内部を案内してもらいましたが、なかなか快適そうでした。ガス電気代も住居費込みなのですが、エネルギー価格高騰にもかかわらず、もったいないくらい暖かく、ガス代をケチっている我が家よりぬくぬくしていてうらやましくもありました。

寮の学生はほとんどが大学1年生。全国、時には全世界から知り合いもいない全く知らない街に来て暮らすため、寮で他の学生と一緒に生活することで話し相手もできるし、情報共有もできます。コロナ禍を過ごした2020~2021年度の学生は気の毒でしたが、2022年度は大学も通常通りに戻って、タイミング的には幸運だったという他ありません。息子も寮で親しい友人ができて、2年目からは一緒に暮らそうということになっているそうです。このようにして3~5人くらいの仲間がグループを作って、シェアできる家やフラット(アパートメント、日本でいうアパートやマンション)を物色し始めています。

イギリス大学生が住むところ

1人1人が個別の賃貸しフラットに住むと家賃がかなり高くなるため、大きめのフラットや普通の家を3~4人でシェアして住む学生は多いです。家主がいて、ルーム別の賃貸し契約をする事で、知らない同居人と一緒に住むこともありますが、仲のいい仲間とグループでそういうフラットや家を丸ごと借りる場合もあります。それぞれが個室ベッドルームを持ち、キッチンやバス・トイレ、リヴィングスペースなどを共同で使うことになるため、家賃や光熱費も低めに抑えられるし、1人暮らしの孤立が苦手な人にも適しています。

私が社会人学生としてマンチェスター大学に入った当時、車で1時間くらいのところに住んでいたので、はじめは車で通っていました。でも、9時に始まる講義がある時など交通渋滞に巻き込まれて大変だったのと、大学近くに駐車するのが困難だったため、2年目からは大学近くの一軒家を他の学生とシェアして週末だけ家に帰る生活をしました。

当時、あまりお金がなく家賃を払う余裕がなかったため、大学近くの安い家をローンで買って、他の学生から家賃をもらうことでローン返済をする事に決めました。私は一番狭い物置のような部屋(シングルベッド2つ分くらいの大きさ)に寝泊まりだけして、週末は家に帰る生活でした。

その当時、その家でフランス、ドイツ、ベルギー、日本と様々な国籍の学生と共同生活をして、とても楽しかったことが今ではいい思い出になっています。時には、それぞれのお国料理を交代で披露してみんなで食べたりもしたし、キッチンやリヴィング、庭でいつもおしゃべりが絶えませんでした。

大学を卒業し自分では住まなくなってからも、その家は他の学生に貸し続けていたので、定期的な家賃収入が入ってきました。さらに何年かしてその家を売ることにしたときは、マンチェスターの住宅価格が軒並み値上がりしていて、思いがけないキャピタルゲインを得ることもできました。

シェアハウス用の家を買う

日本を去るBBC記者が書いた記事で「日本の家は車のように減価償却する」という話で始まった裏にはイギリスの逆事情があります。一般的に中古の家の値段は値上がりするもので、買った時より売る時の値段が高いのが普通です。その値上がり幅は家がある場所、不動産市場の波、家の状態によってかなり違うとはいえ、値下がりするのはまれと言ってもいいでしょう。

もちろん、家は住むために買うものですが、ローンを抱えるにしても家賃は払わないでいいわけだし、自分が住まない家は人に貸して家賃収入を得ることもできます。その上、売る時には利益が出るということで、イギリス人にとって家を買うことは財テクでもあるのです。だから、家の維持改善に熱心で、DIYが発達しているということもあるのでしょう。

100年たった古いものとはいえ、イギリスの家は煉瓦で頑丈に作られているし、窓を二重窓にしたり、セントラルヒーティングをつけたりキッチンやバスルームを今風に改装することで、現代のライフスタイルに合わせて快適にアップデートすることは可能です。このようにして古いものを使い続けることは、安普請の建築物をスクラップビルドで建てては壊すことを繰り返すよりも、持続可能的であると言えます。

子どもが寮を出て2年目から仲間と家をシェアして暮らすと決めた時、それならその家を私たち親が買うのもいいかもしれないという話になりました。それで、何軒か候補を選んで、息子に一緒に住む予定の仲間と一緒にどれがいいか選んでもらいました。そのうち、これはと思った家を扱う不動産屋に連絡して、息子と仲間が家の中を見物させてもらったところ、なかなかよさそうだということです。それで、今日これから私たちもその家を見に行く予定です。

イギリスの家の売買

実は、今私たちが住んでいる家も売ろうという話になっています。家は気に入ってはいるのですが、2人だけになったので、4ベッドルームではさすがに大きすぎるのです。3人でも大きめではあったのですが、広い庭がほしかったため、大きい家を買わざるを得なかった事情がありました。コロナ禍に3人で住んでいる時は、それぞれが別々のベッドルームプラス別々のオフィス・書斎が持ててよかったとは思いました。ロックダウンが始まった年の春・夏は天気に恵まれて、庭で過ごすことも多く、精神的にも癒しになっていました。

この家は約15年前に買ったもので、子供がまだ小さかったし、私たちは2人ともDIYが苦手だったので、いっさい手をかけなくてもいい完璧な状態の家を購入しました。それが15年も何も手を入れずにいると、あちこち支障が出てきて、改善の余地ありあり。壁紙やペンキがはがれてシミがつき、玄関ドアもペンキ塗りが必要、シンク周りは水漏れし、煙突からは雨漏りがしているようだし、ガレージや庭のアウトハウス(小屋)もしかり。それでも、不動産屋に来てもらい査定してもらったら、何も手を入れない状態でこれくらいと言われた金額は買った時より増えていました。ロンドンなどの不動産高騰地域の値上がりに比べれば微々たるものですが。

それで、とりあえず何も手をかけずに売りに出してもらおうということで、不動産屋に写真を撮ってもらうことになりました。そのためには、ごちゃごちゃした家の中を片付けなければなりません。家を買うのもですが、売るのもいろいろと大変。不動産屋の助けを借りて、これからいろいろ忙しくなりそうです。

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