タウンセンターと郊外型大規模ショッピングセンター①

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米国ではおもちゃ販売大手のトイザらス(Toys R Us)が経営破綻を理由に米国内にある店舗をすべて閉鎖するということです。トイザらスと言えば、日本にも進出していますが、これが日本の大規模商業店舗を制限する法律を変えるきっかけになったことをご存知でしょうか。郊外型の大型ショッピングセンターと従来の商店街があるタウンセンターは密接に関係するのですが、それが日本とイギリスでどのように違うのか比べてみました。

トイザらスとショッピングセンター

創業70年の玩具販売チェーンであるトイザらスは米国内に735店舗を展開する大規模企業でしたが、インターネット通販との競争激化などで経営が悪化し2018年3月に米国内の735店舗をすべて閉鎖すると発表。6月29日に最後の200店舗を閉鎖しました。

トイザらスは海外進出もしており、イギリスにも106店舗を展開している玩具最大手でしたが、2018年4月にすべてを閉鎖しています。なお、日本やカナダなど一部の国における事業は継続されます。

トイザらス店舗の多くは大規模な敷地を使って展開しており、これは自家用車が普及するのに伴って急増した郊外型大規模商業施設の典型的なスタイルでした。米国で一般化されたショッピングモールはモータリゼーションの波に乗り1950年代頃から増えてきました。たくさんの小売店舗や飲食店、サービス業まで入居する商業施設で、大きな駐車場を持ち郊外に設置されるのが特徴です。

日本の大規模小売店舗法

米国で乱立し始めたショッピングセンターが日本ではなかなかできなかったのは、1974年に施行された「大規模小売店舗法」が一つの理由でした。

日本では、1970年代頃、各地でスーパーマーケットなどの大型商業店舗が急増し、地元商店街による大型商業施設の進出反対運動がおこった経緯があります。そのため、大型店舗が進出する際には地元小売店事業者を代表する商工会議所と出店予定の大型店が事前に協議し、店舗面積の調整などを図ることが義務付けられたのです。このため、地元商店街の抵抗が大きい所では、大型店舗の進出は厳しくなっていました。

しかし、グローバリゼーションと共に米国などからこのような法律は海外資本による大規模店舗出店を妨げる非関税障壁の一種であるという批判が強まり、その圧力に屈する形で規制緩和がすすめられました。

この圧力は1990年頃に日本進出を狙っていたトイざらズが大きな引き金となっていたのです。当時の米国ブッシュ大統領がトイザらスの日本第1号店のオープンセレモニーに出席しているのが、それを物語っています。

大規模小売店舗立地法

この圧力に押され、日本は1998年に大規模小売店舗法を廃止し、代わりに「大規模小売店舗立地法」という新しい法律をつくりました。この法律は大規模小売店舗を制限する理由として、既存の商店街の利益を守るということより「環境保護」を強く打ち出しているのが特徴です。

このため、新規に大型店を計画する事業者は地元商店街と調整することなく、環境基準さえ充たせば大型店舗を出店できるようになりました。この結果、2000年以降日本では郊外型ショッピングセンターの出店が急増したのです。大規模小売店舗法時代より規模が何倍もある巨大ショッピングセンターが日本中に生まれました。

特に「モール型ショッピングセンター」と呼ばれる、たくさんの専門店舗や娯楽施設、飲食店舗を備えた大規模施設は顧客吸引力が強く、長時間滞在できるところとして娯楽型消費の代名詞となりました。

地元商店街への影響

このため、既存の小規模な個人商店が連なる地元商店街から客が離れていくようになりました。このような商店街は多くが駅前にあり公共交通機関を利用する人を前提にできてきたので満足な駐車場がないところが多く、地価が高いため駐車料金も高くなります。

都市部ではまだ公共交通機関を利用する人が多いのに比べ、近頃地方では自動車で移動することが普通になっています。そうすると、地方の人にとっては大きく無料の駐車場があり渋滞も少ない郊外の大型ショッピングセンターのほうが魅力的になるのも無理はないでしょう。

この結果、古くからあった商店街に客足が遠のき、駅前商店街は軒並みシャッター通りと化しました。

これを受けて2006年にまちづくり3法が改正され、店舗面積1万平方メートルを超える郊外型施設について建設の抑制がかけられるようになりましたが、時すでに遅しという感があります。

大規模ショッピングセンターの衰退

そして今、昔ながらの商店街を衰退に追いやった郊外の大規模ショッピングセンターじたいも陰りを見せるところが出てきているのです。米国ではトイザらスに代表されるようにインターネット通販が普及する中、ショッピングセンターは苦戦しています。

日本でも、バブル期に消費を謳歌するレジャーの中心だったショッピングセンターが、景気後退とそれに伴う一般家庭の収入減により売り上げが減ってきています。

郊外型ショッピングセンターは、週末こそ家族連れでにぎわう所もありますが、平日はがらがらで閑古鳥が鳴いている店舗もあります。車で来るのを前提で建てられたところは公共交通機関で行くのが難しいところも多く、自家用車を持たない家庭や若者、子供はアクセスできません。

かといって、昔ながらの商店街に行ってもすでに閉鎖した個人商店がシャッターをおろしたままの状態となっていて「買い物難民」と呼ばれる問題も浮上してきています。これから高齢化が進み車を運転しない高齢者世帯が増えるのを考えると、困る人はさらに増えていくでしょう。

イギリスでは?

イギリスにも郊外型の大型ショッピングセンターは存在しますが、米国や日本に比べるとその進出数や規模は大きくありません。

それは、郊外型の大型商業施設開発を都市計画制度によって厳しく制限してきたからです。そして、その第一の理由は地元の商店街の利権を守るためではなく、自然環境を守るためでもなく、タウンセンターを守るためです。

これについては下記でご紹介します。

タウンセンターと大型ショッピングセンター②イギリスでは

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