2019年の日本の出生数は調査開始以来最少の86万5234人。人口自然減は13年連続で、初めて50万人を超えました。出生率は1.36で前年を0.06ポイント下回り、4年連続で低下し、予測より早いペースで少子化が進んでいます。ここでは、出生率低下の理由とその対策について考えます。
2019年出生数データ
出生数と人口減少
2020年6月5日に2019年の人口動態総計が厚労省から発表されました。それによると、2019年の出生数は1899年の調査開始以来最も少ない86万5234人となっています。前年比5万3166人減で、4年連続で過去最少を更新しました。
出生数は終戦直後の第一次ベビーブーム(1947~49年)に250万人、第二次ベビーブーム(1971~74年)に200万人を超えましたが、その後はずっと減り続け、2007年には死亡数が出生数を上回りました。
2019年の死亡数は増加して138万1098人となり、死亡数から出生数を引いた人口自然減は51万5864人で、初めて50万人を超えました。人口自然減となるのは2007年から13年連続です。
母親の年齢別に見ても出生数はすべての年齢グループで減少しています。第一子出生時の母の平均年齢は30.7歳で40歳以上の出生に占める第一子の割合は36.1%と出産年齢の高齢化の傾向も続いています。
合計特殊出生率
1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す「合計特殊出生率(Total Fertility Rate)」(以下「出生率」)は人口を維持するためには2.07から2.08が必要と言われています。
これに対し、2019年の出生率は1.36で前年を0.06ポイント下回り、4年連続で低下しました。
過去を振り返ると、出生率は戦後第一次ベビーブームの1949年に4.32と過去最高を記録し、第二次ベビーブーム1973年には2.14でした。1970年代半ばから少子化現象が続き、1990年には出生率が戦後最低となって「1.57ショック」と呼ばれるように社会を驚かせました。
第二次ベビーブーム世代も今や40歳半ばとなり出産適齢期から外れつつあるので、第三次ベビーブームの機会は失われ、出生数の下降傾向は今後も続くとみられています。
少子化は人口減少や社会の高齢化をもたらし、将来的に労働力不足、また労働生産人口が減って社会福祉などにかかる負担が少ない数の成人にのしかかることになります。
結婚している夫婦の出生数
なお、合計特殊出生率は一人の女性が産む子供の数を示しており、結婚している夫婦の完結出生児数(結婚持続期間が15~19年の初婚どうしの夫婦の平均出生数)は2015年で1.94です。つまり結婚しているカップルだけを平均すると、概ね2人の子供を持っている計算になります。
この数字は1970年代から2002(平成14)年まで2.2人前後で安定的に推移していましたが、2005(平成17)年から減少傾向となり、2015(平成27)年には1.94と、過去最低です。
都道府県別
出生率を都道府県別に見ると、最高の沖縄1.82と最低東京の1.15との間に大きな差があることがわかります。
出生率が高い上位の都道府県は下記の通りです。
- 沖縄 1.82
- 宮崎 1.73
- 島根 1.68
逆に出生率が低いのは下記の順になっています。
- 東京 1.15
- 宮城 1.23
- 北海道 1.24
他にも京都、大阪、奈良の関西圏や東京近郊の地域で出生率が全国平均より低くなっています。
海外との比較
先進国は少子化の傾向
少子化については日本だけの現象ではなく、先進国ではどこでも大体少子化の傾向があります。
フランス(1.90)、米国、イギリス、スウェーデンは合計特殊出生率が増加傾向となっており、イタリア(1.32)、ドイツは低い傾向にあります。
上記の図には含まれませんが、韓国は出生率が1を下回る0.98となっており、少子化問題は日本よりさらに深刻です。文政権は少子化対策として出産・養育費支援増額や子どもの医療費無料化などを導入しています。
日本は婚外子が突出して少ない
日本は結婚しているカップルだけを見ると、出生率は1.94と国際的に見ても低いわけではありません。ただ「婚外子」つまり、結婚をしていないカップルが子供を産む率が国際的に比較するととても低いのです。
下記は2016年の「婚外子」の割合ですが、70%を超える国もあり、EUやOECD平均でも50%に近いのに、日本と韓国、トルコもですが、5%以下と突出して低いのがわかります。
少子化の理由
どうして少子化問題は解決のきざしを見せないのでしょうか?その理由について考えてみます。
一般に語られる少子化の理由
一般によく聞く理由は次のようなものです。
- 未婚化や晩婚化
- 経済的な問題
- 保育問題
まずは、若者が結婚しなくなったことが原因と言われます。結婚している夫婦は平均して約2人の子供を産んでおり、女性一人当たりの出生率が低いのはそもそも結婚しない人が多いから、全体的に平均すると低くなるというわけです。
そして、これは出産だけでなく結婚にも関係するのですが、若い人たちが経済的に困窮していて結婚とか子供を持って育てるだけの余裕がない、または将来にわたって余裕ができると思えないことです。
さらに、共働きが普通になった現在、自宅や職場に便利な場所に保育園のあきを確保することができるかどうかという待機児童問題も少なくとも都会にはあります。
経済・保育面での解決方法
2や3に関しては、政府が出産・育児・教育費など子供を持つのにかかるコストに対する援助や保育サービスを提供することでかなり解決するでしょう。少子化、高齢化、労働力不足、人口減を国の問題だととらえるのなら公的な長期投資として当然の支出です。
日本はヨーロッパ諸国に比べると家族政策における社会支出(児童手当、出産・育児給付金、就学前教育など)が低水準にとどまります。GDP比で計算すると日本は2016年に1.34%しか使っておらず、米国に比べれば多いものの、イギリス(3.85%)やスウェーデン(3.63%)などの半分以下となっており、まだまだ国としてできることはありそうです。
海外の家族政策事例
たとえば、イギリスでは妊娠、出産にかかる費用はすべて無料です。これには妊娠中の検査、無痛分娩や帝王切開も含む出産・入院費用、妊婦・出産後1年間の歯科治療、両親学級、不妊治療費用も含まれます。
出産後も52週間の出産休暇(うち6週間は給与の9割支給、33から39週目は減額)、父親休暇、両親育児休暇、フレキシブル・ワーク制度などを利用できるほか、子ども手当、託児費用補助などが提供されます。シングルペアレント(母子・父子家庭)や低所得家庭、障害を持つ子供などには特別な補助もあります。
イギリスはブレア・ブラウン労働党時代(1994~2010年)に幼児教育をはじめ家族政策に力を入れたこともあり出生率が伸びましたが、2010年保守党政権に代わり緊縮財政が始まってからは出生率が下がっています。福祉政策の改革などにより、若年層が経済的に余裕のない生活を迫られていることが理由の一つと考えられます。
フランスは早くに少子化問題に直面しており、戦後は一貫して家族政策に取り組んでいます。これまでの伝統的な家族構造から共働きカップルの子育てを支援するというスタイルを明確に打ち出し、育児休業・復職制度や子育て支援金支給などを通じて育児支援。このため、女性の就業率を維持しながらも出生率を比較的高く保っています。
スウェーデンも1970年代に急減していた出生率に危機感を抱いた政府が積極的に家族政策を推進。1年半の間、所得の8割を補償する育児休業制度や児童手当、教育費無償などを通じて子供を持つカップルを支援することで、出生率回復。しかも、保育サービスを充実させたり時短勤務ができることで女性の労働力率は維持したままです。
ハンガリーでも最近の家族保護政策が功を奏し、2020年1~4月の出生率が昨年と比べて5.5%上昇しました。子供のいる家庭への減税、子供が4人以上いる女性には生涯所得税を免除といった、家族にインセンティブを与える政策がとられているためです。
このような例を見ると、政府の政策が出生率の増減に影響を及ぼすことがわかります。大切なのは、少子化の原因を正しく理解しピンポイントで「効果的」な政策を導入することでしょう。
日本でも過去数十年にわたって少子化問題に取り組んでいるのに、あまり効果が上がっていないのは、問題を正しく理解して効果的な政策を打ち出していないからではないでしょうか。
少子化の本当の理由:女性の本音
子供を産むのは女性なので当の女性に本音を聞いてみると、少子化の本当の理由が浮かび上がってきます。ここではTwitterのコメントの一部を紹介します。
仕事と家事子育てを両立するために睡眠時間けずったり、体調悪くても休めないと長生きできそうもないからね。
これでは結婚も出産も拒否する女性が増えても不思議はないし、そういう女性を責められない。
みんな、幸せに暮らしたいだけなのに。https://t.co/VwSZqT0geO— ラブリー@news from nowhere (@1ovelynews) June 11, 2020
出生率4年連続減、当たり前です
だって女にとってなんのメリットもないどころか、デメリットしかない
金、時間、体力、精神力、を無償で国のために提供するほどマゾじゃないですよ
産む機械じゃないので
子供は宝的なリプがあるけど的外れ
1日は24h 体は1つ 産める期間は25~40位の約15年限定
でよ? フルタイム残業有で遅くまで働き勿論毎日の家事はして
加えて1人あたり20年育児??しかもそれを2人以上???
どういう計算?
それを産みたくなくても国のために??
1人産むたび3000万円の負債を抱え、妊娠期間は免疫低下、体調不良や加害に怯え、命懸けで出産し、壮絶な痛みと大怪我を負いながら休む間も無くワンオペを強要され、キャリアを剥奪される。 女性は奴隷でも産む機械でもないので、論理的解決脳(笑)を活かして少子高齢化でも問題のない社会づくりをどうぞ
少子化じゃなくて #出産ボイコット なんですよ。産めるわけないやん、こんな自己責任社会で。
少子化が始まって既に3分の1世紀が経つのに、他の国々が対策の主眼に置いた「どうすれば産みたい人のハードルを減らせるか」という視点を全く持っていない人が、いまだに政治家にもメディアにも多々いる
エリア総合職や一般職の面接を受けると「留学してきて学生時代がんばっているのに、もったいない」…と言われ、総合職を受けると「総合職は全国転勤だよ。結婚や出産はどう考えているの?
日本では、妊娠出産がまるで「人にご迷惑をおかけする事」みたいな雰囲気になっている。 そもそも日本は労働者の権利である有給さえまともに取れない。NZは就任間もない大統領の妊娠を国民が歓迎したけど、日本だったらバッシングが起きるに違いない。日本で女性議員が増えない原因と無関係ではない
少子化を危惧する割には
・妊婦さんに案外冷たい
・分娩時の苦痛は通過儀礼、という風潮が根強い
・ベビーカーの母親にも案外冷たい
・安心して子育てできない
・虐待は放置
19年の出生率1.36、12年ぶり低水準 少子化加速てか、地方で限られた公務員以外に、食い扶持が少ないから、大阪や東京に出て行くしかないのでは?
で結局、バカ高い家賃だの飲食代だの遊び第に消えて貯金もできず、少子化へ
上記にリンクがある記事に未婚男性と既婚女性は長生きしないというデータがあります。有配偶男性の死亡年齢中央値は未婚男性より15年長いのですが、女性の場合は未婚者が81.9歳、有配偶者が78.3歳と逆転していて、結婚後の家庭生活の負荷で女性は命まで縮むというわけです。
実際、2016年社会生活基本調査によると、平日の睡眠時間が最も短いのは50~54歳女性の6時間40分で、次が45~49歳女性の6時間42分です。30年前の1986年の調査でも最短だったのは40~49歳の女性ですが、この時は7時間12分でした。この30年間で、子育て世代女性の短い睡眠時間がさらに30分短くなっています。
昔は専業主婦も多かったでしょうが、今はほとんどの女性が仕事を持つ時代です。それなのに日本人男性の家事育児参加率は国際的に比較しても低く、しかもあまり改善のきざしがありません。仕事も家事も育児もすべて背負わなければならない女性がいかに大変か、想像するに難くありません。
政府や政策決定者が「少子化が問題だ」「若い女性に子供を産んでもらわねば」と憂いつつ、同時に「女性の社会進出を」「女性が輝く日本」と叫ぶ裏で、当の女性たちは「私たちは産む機械ではない」「奴隷のような生活は無理」と言っているのです。その叫びは時に悲痛です。
女性たちは「わがままだから子供を産まない」のではなく「子供は欲しいが、持つと失うものが多すぎる」のです。仕事、キャリア、お金、経済的自立の機会、自由、睡眠時間、余暇時間、健康など。
少子化に向かう国の特徴
女性の社会進出が進むと少子化になるという説も聞きますが、北欧を中心とする先進国の場合は必ずしもそうではありません。戦後、専業主婦が少なくなり女性が仕事をし始めることで出生率が下がるという傾向は見られましたが、その後各国政府の子育て支援政策のおかげもあり、出生率が回復していっています。そしてそういう国では結婚・事実婚にかかわらず、男女が協力して家事育児に参加する姿勢が見られます。
逆に、男性優位で権威主義的な社会では、共働きしながら出産子育てをするのが難しい環境や社会規範があり、仕事か子供かを選択せざるを得ない女性が仕事を選ぶことで出生率が下がる傾向があるようです。
日本や韓国などの儒教圏、欧米でも旧ソ連圏やドイツ語圏、イタリアやスペインなどのカトリック圏など、保守的・伝統的な家族の役割分担が根強く残る国に少子化の傾向があるのは偶然とは思えません。
日本や韓国に顕著ですが、伝統的な家族観に添わない婚外子が歓迎されないことも出生率の低さに関係しているでしょう。上記の国際比較にもあるように、海外では婚姻を伴わない出生が半分という国がたくさんありますが、そういう国では法律・制度・税制などの面でも事実婚を結婚とほとんど同様に扱っています。
少子化を解決するには
少子化解決策には下記のようにさまざまなものがあります。
- 経済的援助や保育支援
- 女性が社会進出と子育てを両立できる社会
- 男性の家事育児参加とそれを可能にする労働の在り方
- 多様な家族形態(事実婚や1人親家庭など)の受け入れと支援制度
- 一極集中是正と地方移住
まず基本となる考え方としては女性にまっとうな人権を与えるということにいきつきます。というのも、少子化が止まらないのは若い女性の悩みを実感として理解していない人たちが政策決定をしているからではないかと思えてならないのです。
日本で比較的地位がある人や意思決定をする人というと中年から高齢の男性になるのですが、こういう人たちからよく聞く言葉が「日本は少子化で将来が心配だ。若い女性にもっと子供を産んでもらわないと困る。今どきの若い女性は仕事したり遊んでばかりでわがままだ。自分のことばかり考えている。」というものです。能天気にそう言える男性には専業主婦のお母さんや妻がいて自分や自分の子供を育ててくれたかもしれません。
家父長制度に基づいた男尊女卑、男女不平等な社会ほど少子化の傾向があることは韓国や日本を見れば明らかであることはすでに述べました。
男は外で働き女は家で子育てをするというモデルが一般的だった昔はシンプルでしたが、現代はそうではありません。それなのにその頃の道徳観や固定観念で政策を考えているうちはいくら「全ての女性が輝ける社会を」と謳っても絵にかいた餅です。昔ながらの道徳観を守りたいのなら少子化問題はあきらめ、移民政策に舵を切った方がいいでしょう。
社会がこれだけ変わってきているのに国の様々な制度や政策は未だに昔の価値観に基づいています。戸籍制度、事実婚カップルの権利、夫婦別姓、寡婦控除制度、婚外子の扱い、同性婚などきりがありません。
さらに、法律や制度以外の社会通念や偏見、教育・就職・職場における女性差別問題、#Metoo 運動でようやく女性が声を上げ始めたセクハラ、性暴力、痴漢などの問題、マタハラ、子連れの母親への不寛容な扱いなど、女性が人間として普通に生きて仕事をし子供を持つことが難しいのが日本社会です。
若年層の低所得や非正規雇用化、格差社会化で共働きが必須なのに、父親(候補)は家事育児はせず、する気はあっても長時間労働でできず、女性は働きながら妊娠期間を過ごし、育休を取り、何とか保育園を確保し、子どもを保育園に送り迎えしながら働いて家に帰ると家事育児で寝る暇がない。独身の友達が仕事をばりばりこなし自由時間を謳歌してキラキラしているのを横目で見ながら、出産や子育てが女性の人生においてもたらすコストについてため息をつく毎日。
現代の女性は大学卒業までは男性と同等に扱われ期待されるので一生働き続けるキャリアを目指しますが、そのために20~30代は仕事につぎ込み、気がついたら妊娠するのも難しい年になってしまい高価な不妊治療をしても手遅れになってしまうという女性の話も聞きます。
「男女共同参画局」では、女性の高学歴化・社会進出が進むと出生率が低くなりますが、社会における女性の地位が向上するにつれて出生率は回復するとしています。下記のグラフは2000年のものですが、女性労働力率と出生率は相関関係にあることが見て取れます。
女性の労働力を維持したまま出生率をあげるためには、保育サービスを充実させたり出産休暇や育児休暇を提供するとともに、出産育児後の職場復帰がスムーズであること、長時間労働をしなくてもいい職場環境、希望者にはフレキシブルな働き方を可能にすることが必要になってきます。
女性だけでなく、男性を含めた働き方の見直しをして、伝統的性別役割分担意識を解消し男性の家事・育児参加を促すことも大事です。一人で何もかも背負うのではなく、両親が協力して子育てに参加することで家族の絆も強まります。
さらに、そのような「家族の絆」が結婚という制度に関係なく育つことは海外の例を見ると明らかです。欧米では家族形態の多様化が進み、婚外子に対する差別的な制度や偏見是正される中、事実婚選択者が増えていて、共働きの核家族が子育てを協力しあう風土があります。そしてそういう社会では政府がことさら「少子化」政策をせずともカップルは自ら子供を持つようになります。
少子化の原因に「結婚する人が減ったから」を上げる人がいますが、日本の非婚者の比率は外国に比べて飛びぬけて高いわけではなく、結婚率を上げたからと言って少子化の解決にはなりません。
今の日本に必要なのは1人親をも含む多様な家族の在り方をサポートする法律・制度の整備です。事実婚や選択的夫婦別姓、非嫡出子に嫡出子と同様の権利を与える、戸籍制度の見直し、寡婦控除の扱い、養子制度など。
5番目に上げた「一極集中是正と地方移住」については、都会に比べ地方は出生率が高いことから待機児童や環境面で問題のある都会から若者が地方に移住する、または地方の若者が都会に流出することを防ぐという点ですが、これについては「保育園落ちた」少子化なのに待機児童が減らない本当の理由を参考にしてください。
このためには地方から都会への若い女性の流れを食い止めなければならないのですが、それについては地方創生の鍵は女性にある:そのメリットと具体的な方策に書きました。女性に教育や仕事の機会、また魅力的な生活環境を提供し「住みたい」と思えるまちづくりをしようという考えです。
政府の目標と取り組み:何が必要か
日本では1970年代半ばから少子化現象が続き、1990年に戦後最低の「1.57ショック」が起きました。その後、少子化問題に取り組むために30年の間に様々な政策が導入されました。
今も子育ての不安や経済的問題を取り除くことが重要だということで、若者の雇用の安定、子育て費用の軽減、教育・保育の無償化、待機児童解消、ワーク・ライフ・バランスなど様々な取り組みを推進しています。けれどもその効果はほとんど見えず、少子化が以前の見通しよりさらに早いペースで進んでいます。
政府は出生率を25年度までに1.8に引き上げる目標を掲げていますが、このままでは達成は難しいと言わざるを得ません。女性たちの声を聞いていると韓国並みに1を切る可能性も出てくるのではないかと悲観的になります。
もし政府が本気で少子化問題を解決したいと思っているのなら、ここで今一度本当に必要で効果のある政策を打ち出す時です。そのためには机上の空論ばかり述べるのではなく、出産予備軍の実際の声に耳を傾けることが必要です。いくら少子化問題を解決したいといっても、出産や結婚を個人に強制はできないし、それは逆効果です。
若者の声を聞くためにアンケート調査やフォーカスグループを使ったリサーチも効果的ですが、最近は幸いなことにSNSなどで一般人が気軽に情報発信しているのでそれを追うだけでも彼らの本音がよくわかります。
そういう意見をすくいとって政策に生かすためには、少子化問題を「じぶんごと」としてとらえることができる若い層や女性を政策決定者に選ぶことも効果的でしょう。出産や子育ては一人でできるものではなく、周りや社会の助けが必要です。女性が子供を持とうと思える社会にするためには国や政策決定者への信頼が欠かせません。本当に必要な政策を信頼に値すると思わせる強いメッセージで伝えることが少子化問題解決の鍵となります。