マイボトル持ってる?プラスチックごみを減らすために②

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Plastic bottle

3年くらい前に昔の友人と久しぶりに会って一緒にウォーキングに出かけました。途中のコンビニでプラスチックボトルに入った水を買ったのですが、友人が「マイボトルは持っていないの?」と質問。彼女は環境のためにプラスチックなどをなるべく使わないようにしているそうです。その頃プラスチック問題についてそすれほど真剣に考えていなかった私は、それから考えを改めました。

ペットボトル or プラスチック・ボトル

レジ袋有料化についての記事でプラスチックごみ問題に関しては論じたので、ここでは省略します。ここでは、日本で「ペットボトル」と呼ばれているプラスチックボトルについて考えます。まずは呼び方について一言。

日本ではプラスチック製のボトルのことを「ペットボトル」と呼びますが、この「ペット」はpolyethylene terephthalate(ポリエチレンテレフタレート)というポリエステルの略語で、大文字で表記されています。なので英語読みするとしたら「ペット」ではなく「ピー・イー・ティー」となるはずですが、どちらにしても一般的な英語としては通用しません。

専門家や化学者なら別ですが、一般の英語話者に「ペットボトル」と言っても通じないことが多いのです。英語では普通「プラスチックボトル」という言い方をします。

プラスチックボトル or マイボトル

私の友人のように、イギリスでは環境問題に少しでも関心がある人はむやみにプラスチックを使うことをよしとせず、飲み物もマイボトルを持ち歩いていることが多いです。

友人は大学で働いていますが、職場でミーティングの時にプラスチックボトル入りの飲み物を出すことをやめることに決まったそうです。一緒に入ったカフェにセルフサービスの水が置いてありましたが、プラスチックカップが用意されていたので、彼女はわざわざ「ガラスのグラスはありませんか?」と聞いていました。

イギリスの職場や待合室、ジムなどに給水機が置いてある場合、以前はプラスチックカップが用意されていましたが、最近は「マイボトルをご持参ください」と書いてあることが多くなってきました。

スーパーマーケットのホットドリンクコーナーでも昔はプラスチックカップが置いてありましたが、今は自分でマイカップを持参するか、何度でも使えるマイカップを購入するかになっているところもあります。

プラスチックボトル問題

昔は牛乳などの飲料容器には瓶が使われ、洗浄後再利用されていました。けれども、軽くて安価なプラスチックボトルが使われるようになると、一度きりしか使用されない使い捨て容器の利用が年々増えてきました。これまで水道水を飲んだり、水筒にお茶を入れて持ち歩いていた私たちはコンビニや自動販売機で気軽にプラスチックボトルに入った水やお茶を買うようになっています。

このような大量のプラスチックボトルのうち、リサイクルされたり適切に処理されないものが埋め立てられたり、不法投棄やポイ捨て、川や海への流出によって環境破壊や海洋汚染をもたらしています。

プラスチックボトルのリサイクル

「プラスチックボトルはリサイクルの優等生」と呼ばれることがあります。ほかのプラスチック製品に比べ、プラスチックボトルはリサイクルされる率が高いからです。特に日本のプラスチックボトルのリサイクル率は80%以上で、欧州の約40%、米国の約20%に比べてもかなり高く、世界最高水準を維持しているといわれます。

とはいえ、その内訳をみてみると、リサイクル分のうち約37%が海外へ輸出してのリサイクルで、国内だけで見るとリサイクル率は53%です。実は日本は世界第3位の廃プラスチック輸出大国で、国内で対応しきれないプラスチックボトルを外国で処理してもらっているのです。

そして、それも長くは続かなくなってきました。日本のリサイクル率は2009年に89.9%だったのが2018年は84.6%と減っていますが、これは主に海外でのリサイクルが減ってきているためです。

廃プラスチックボトルの主な輸出国だった中国が2018年に廃棄物輸入禁止を導入したため、日本は輸出先をタイ、マレーシア、ベトナムなどの国に振り向けようとしました。けれども、これらの国でも軒並みプラスチック廃棄物輸入制限に向かっていて、これ以上の輸出が難しくなってきています。

PET リサイクル

PETボトルリサイクル推進協議会

ちなみにプラスチックボトルのリサイクルとしては、再びボトルになるほか、繊維やシートなど、ほかの工業原料や素材になることもあります。けれども、新たにプラスチック製品に加工するとき新しい樹脂を混ぜる必要があるので、エネルギー使用量や二酸化炭素の排出を減らすことにはなりません。

このため、一般ごみと一緒に焼却炉で焼却処理をする方法も取られていますが、それでは化石燃料を一度しか使わずに燃やしてしまうことになるので資源やエネルギーの節約にはなりません。

これまで長年にわたって、廃プラスチックボトルは海外輸出をすればいいからと安易に考えていましたが、これからはそうはいきません。とはいえ、廃プラスチックの新たな輸出先を探したり、リサイクルを増やすことばかり考えるのでなく、プラスチックに対する従来の発想を抜本的に変え、増え続けるプラスチックボトルを減らすこと自体を考えないといけないのです。

そのためにはどうしたらいいのでしょうか。

マイボトル使用

衛生状態が完璧でなく、水道水を飲むのが不安な国ならともかく、日本ではかつて水は買うものではなく水道から出てくるものでした。少し前までは自動販売機などでお金を出して水を買うことに抵抗があった人もいるのではないでしょうか。とはいえ、外出先でのどが渇いたときなどつい店舗や自動販売機でプラスチックボトル入りの飲み物を買ってしまいますよね。

けれども、日本でも環境問題について関心がある人の間ではマイボトルを持ち歩く人が増え、飲料水を無料で提供する「給水スポット」の設置も増えてきました。使い捨てのプラスチックボトルをむやみに増やすことなく、節約にもなるのですから、この習慣はもっと広がってもいいものだと思います。



無印良品ほかの取り組み

外国でも「MUJI」の名前で人気がある無印良品では、2020年7月1日から給水サービスを開始しました。多くの店舗にフィルターを通した水道水を給水できる給水機が設置されています。

同社はその目的について「飲料水をきっかけにプラスチックごみ問題について顧客とともに考えるため、持続可能な社会への第一歩として自分で詰める水を提供する」と説明しています。

無印良品は「自分で詰める水」用のボトルほか、その中に入れて溶かして作れるお茶や保温保冷マグも同時に販売して「マイボトルを持ち歩く」ライフスタイルを提案します。

さらに、給水ポイントをチェックできるアプリも開発。そのアプリを使うと給水ごとにペットボトルやCO2 削減量が示され、給水するごとに環境への貢献度がわかる仕組みにもなっています。

無印良品だけではありません。ほかにも、環境問題に取り組む企業は増えてきました。

サッポロビールはビール缶にCO2排出量を明記することになったし、スターバックスはプラスチック製ストローの削減に取り組んでいます。日清食品は人気商品であるカップヌードルのカップを環境負荷の低いバイオマスECOに切り替えたり、詰め替えができるリフィルタイプ商品を導入してカップを使い捨てにしなくてもすむようにしています。

外国に目をむけても、このような動きはもっと以前から進んでいます。

例えば最近、スコットランドのウィスキーメーカー、ジョニー・ウォーカーが2021年から紙でできたボトルでウィスキーを販売すると発表しました。スピリッツを紙製容器で売るのは世界発ということです。同社は自社製品においてプラスチックやガラス製品の利用削減に取り組んできました。

企業のESG

自社の利益ばかりを追い求めていると思われがちな民間の企業がどうしてここまでコストをかけて環境問題に取り組んでいるのでしょうか。

それは、今や環境への配慮が企業にとって避けることができない理念だからです。

企業活動が環境や社会にどう貢献しているかを示す「ESG」が世界的に企業ブランドに大きな影響を与えるようになってきています。

「ESG」は環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取とったもの。

民間企業といえども、ただ利益を追求するのではなく、広く社会や環境に貢献する義務があるという考えが社会に広まりつつあり、この指標が企業ブランドに影響を与え、人々の消費行動にもつながるようになってきています。

消費者は環境問題に取り組んだり、社会貢献をしている企業を「好ましい」とか「かっこいい」と思い、それらの企業の製品やサービスを選ぶようになっているのです。たくさんのライバルが存在する厳しい競争のもと、自社の企業イメージを上げ長期的な消費行動を促すことは企業にとってサバイバルの一環となってきています。

脱プラスチック

私たちの生活はプラスチックのおかげでとても便利なので、それを使わずにすますなんて大変と思う人もいるかもしれません。自分一人がプラスチックボトルを使わなくなってもそれが環境のためにどう役に立つのか、無意味なのではないかと思う人もいるでしょう。

けれども、それほど難しく考えなくても1人1人ができることから始めればいいのではないでしょうか。

去年日本に帰国したとき80歳になる母が「昔は小鍋を持ってお豆腐屋さんに豆腐を買いに行き、水の中に入った豆腐を一つずつすくって売ってもらっていた」と思い出し話をしていました。50年以上前の話ですが、考えようによってはついこの間でもあります。その頃に戻るのは難しくても、せめて飲み物くらいはマイボトルに水を入れて脱プラスチックを目指したいものです。



https://globalpea.com/plastic-waste

参考資料

https://www.unenvironment.org/resources/report/single-use-plastics-roadmap-sustainability

https://www.muji.com/jp/ja/stories/food/520171

https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf

http://www.petbottle-rec.gr.jp/

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