郊外型ショッピングセンターによる地方商店街への影響:イギリスDudleyの事例

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近年、日本でも郊外に大型ショッピングセンターができて、地方の商店街が衰退する現象がおきています。昔からあった駅前の商店街などで、小売店が店を閉め、商店街がシャッター街になってしまっているのをあちこちで見てきました。イギリスでもこういう現象が起きていたことから、都市計画規制によってコントロールしようとする政策に変わっています。

日本での郊外型商業施設の台頭と商店街の衰退

郊外にある大型商業施設はアメリカのショッピングモールが始まりです。自動車が普及しフリーウエイが全米に敷かれた1940年代以降、フリーウエイを降りた一般道沿いにこのようなモールが次々に作られました。

それが日本にやってきたのは1960年台終わりです。1969年世田谷にオープンした玉川高島屋ショッピングセンターをはじめとして、高度経済成長と自家用車保有率の上昇と共にショッピングモールが全国に増えていきました。1981には年千葉県船橋市に売り場面積日本一(当時)のららぽーと船橋ショッピングセンターができ、週末に自家用車で訪れ買い物を楽しむ家族連れの姿が増えるようになりました。

1990年代に入るとこのような郊外型商業施設は地方でも乱立の兆しをみせるようになりました。そのきっかけとなったのは1991年の大規模小売店舗法の改正です。それまでは大規模店の出店は地元に根付いた小売店を守るために規制されていました。しかし、アメリカ系の大型玩具販売店が地元商店街の猛反対で出店不可能に陥ったことでアメリカが日本政府に圧力をかけ市場開放を迫ったのです。

その結果、自家用車保有率の高い地方では特に、広く無料の駐車場がある郊外型ショッピングセンターに人々が集まるようになりました。そして、その近隣にある商店街を訪れる人が減少し、商店街にあった小売店が店を閉めシャッターをおろすように。店がなくなると、地元商店街のコミュニティが衰退し、環境が悪くなり、魅力がなくなります。非道徳的行動や犯罪も発生するようになり、人が余計に寄り付かなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

駅や中心地から徒歩圏内にある商店街が衰退すると、困るのは車を運転できない年少者や学生、老人です。歩いて行ける近所の店がつぶれると、自分たちで行動することが難しくなり、生活が不自由になります。車社会になり中心市街地が衰退すると、地方の過疎化に拍車がかかる原因にもなるのです。

イギリスの事例

イギリスでも、1960年代以降、郊外型の大規模商業施設が増えてきました。はじめは地方の経済発展を促すものとして歓迎されていたのですが、だんだんとその影響が昔からあるタウンセンターに及ぶことが分かってきて警鐘を唱える声が高くなってきました。イギリスではすべての開発において都市計画許可申請をする必要があり、ショッピングセンター開発ももちろん許可が必要です。なので、地方自治体がそうと決めたらそうしたショッピングセンター開発の申請はすべて不許可とすることもできます。

地方自治体が策定する開発プラン Development Plan の政策としても商業開発はタウンセンターに集中させ、郊外型のショッピングセンターの開発をむやみに許可しないとする自治体が増えてきました。その結果イギリスでは郊外型のショッピングセンターは都市計画許可を取るのが非常に難しくなってきています。

エンタープライズゾーンとショッピングセンター

しかし1980年のはじめ、当時の保守党首相マーガレット・サッチャーが都市計画制度が国の経済発展の妨げになるとして、一種の抜け道を作りました。それがエンタープライズ・ゾーンと呼ばれる制度です。このエンタープライズ・ゾーンに指定された地区では、経済開発のために通常の都市計画規制が緩和され、10年間事業税が免除されるということになりました。

そのエンタープライズ・ゾーンの一つとして指定されたものにイングランド中央部ウエスト・ミッドランズのダドリー(Dudley) 近郊の地域があります。ダドリーの中心市街地から5キロほど離れたところに、閉鎖され放置されていた大きな製鉄工場跡がありました。製鉄工場閉鎖の際そこで働いていた1,300人の職が失われたので、地元の経済活性化と雇用創出に役立つことを期待されその土地がエンタープライズゾーンに指定されることになったのです。当初は工業団地、工場や倉庫などをを誘致することによって、失われた雇用創出を図ろうという考えでした。

けれども、工業団地の代わりにできたのはショッピング・センターでした。郊外型ショッピングモールを開発しようとしていたディべロパーが都市計画規制がなく、金銭的にも有利なエンタープライズ・ゾーンという制度を利用したのです。

Merry Hill Shopping Centre

Merry Hill Shopping Centre

閉鎖された製鉄工場跡だけではなく、周囲にあった農地も使ってメリーヒル・ショッピングセンター(Mary Hill Shopping Centre)が作られることになりました。1984年に工事が始まり、翌年幾つかの店鋪が開店、その後も開発が続いてスーパーマーケット、デパート、各種の小売店や飲食店が立ち並ぶ大規模ショッピング・センターとなりました。今では214店鋪、10,000台用の無料駐車スペースを持つ郊外型大規模ショッピング・モールです。総売り場面積は約154,000㎡、イギリスで5番目に大きいショッピング・センターとなっていて、年間2,500万人が訪れます。

ダドリー・タウンセンターへの影響

メリーヒル・ショッピングセンターはダドリーのタウンセンターから5キロほど離れたところにあります。ダドリーは古くからある伝統的な街で、もともとは中規模のマーケットタウンとして地域経済の中心地でした。市役所、病院、カレッジ、図書館などの公共施設も位置し、ダドリー城址や動物園、博物館、映画館などの施設もあり、周辺の郊外からも人が集まる活気のある街だったのです。

けれども、ダドリーのショッピング街はだんだんと空き店舗が増えるようになりました。タウンセンターにあった店舗が次々にメリーヒル・ショッピングセンターに移転していくようになったのです。マークスアンドスペンサー、デベナム、マクドナルドといった、町のアンカー(錨)ショップと言える店舗まで次々に姿を消してしまい、タウンセンターには空き店舗やチャリティーショップが軒を並べ、1/3の店舗が閉まっているというシャッター街と化してしまいました。

Dudley town centre

ダドリーの空き店舗(Source: News Team)

2012年に行われたLocal Data Dompany (LDC)の調査ではダドリータウンセンターの32.4%の店鋪が閉鎖していました。イギリスの中規模の街を比べた場合、経済が停滞している点でダドリーは全国で一番という結果です。ダドリーの人口はほとんど変わらず、失業率は周辺の都市や街にくらべても低いほうです。それなのにタウンセンターを訪れる人は70%減りました。これはタウンセンターよりメリーヒル・ショッピングセンターに行く人が増えたのが主な原因となっています。

小売業コンサルタントのHarper Dennis Hobbsが行った調査の結果では、ダドリーはイギリスで一番ショッピングするのに適していない町と診断されました。この調査は様々な要因にスコアを付けて計算されたものですが、ダドリーは400点中5点しか得られなったということです。

新たなタウンセンター

エンタープライズ・ゾーン内にできたことから地元の地方自治体であるDudley Metropolitan Council はメリーヒルショッピングセンターを都市計画規制でコントロールできませんでした。ショッピングセンターができたことで地元の雇用創出には役立ちましたが、その代償として昔からあるタウンセンターがこれほど衰退してしまうとは当初は誰も予想しなかったかもしれません。

けれども一度衰退の下り坂に差し掛かってしまうと転げ落ちるのは早く、タウンセンターはもはや元には戻れないほどになってしまいました。ダドリー・カウンシルはタウンセンターの活気を取り戻そうといろいろ画策しましたが、効果はほとんどなかったようです。最近では、昔のような規模の商店街を復活するのは難しいとあきらめ、コンパクトなタウンセンターを目標としています。たとえば、家具店の空き店舗を取り壊して12戸の市営住宅アパートブロックを建てる計画が市によって進められています。

Dudley Council House

市営住宅建設のため取り壊し予定の空き店舗(Source:Black Country Radio)

一方で、メリーヒル・ショッピングセンターがある地域を新たな「タウンセンター」として指定しています。この地域にはショッピング・モールに隣接して、レストランや映画館などが立ち並ぶレジャー施設も建てられています。すでに存在している機能を認め、新しい「タウン・センター」として整備していこうという考えです。このため、メリーヒル地区とダドリータウンセンターそのほか近隣地区を結ぶ公共交通網を改善し、ショッピング以外の住宅、リクリエーション、アウトドアスペースなどの機能をも充実させるという方針を立てています。

 

【参考資料】

Dudley MBC Unitary Development Plan

Dudley ‘worst among medium centres’ for empty shops

Plans for new council housing in Dudley unveiled

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