異常気象:酷暑と大雨はこれからも続く?

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Drought

日本は毎日暑い日が続いている上、西日本を中心に豪雨の知らせも入っています。夏の熱波や大雨の被害はここ最近日本でも増えていますが、世界各国でも「異常気象」と呼ばれる様々な極端な現象が起きています。これは「気候変動」と関係があるのでしょうか?

IPCC 気候変動報告書

8月9日にIPCC(International Panel on Climate Change)が気候変動に関する報告書「Climate Change 2021」を発表しました。IPCCは国際的な科学者で構成された「気候変動に関する政府間パネル」で、1988年に設立され、2007年にはノーベル平和賞を受賞した機関です。

8年ぶりとなる報告書はこれまでのものと大きな方向性は変わりませんが、気候変動による影響が世界中に被害をもたらしているという危機感をさらに強調するものです。そして「温暖化が人類の影響によってもたらされているという事実は疑う余地がない」と指摘しています。

IPCCはこのまま地球温暖化が進むと、世界中で夏の熱波や豪雨などの異常気象の頻度や強さが増し、深刻な被害をもたらすと警鐘をならしています。

しかし、世界の平均気温の上昇を産業革命前の1.5度に抑えるというパリ協定の目標を達成することは難しくなっています。というのも、直近で去年までの10年間の世界の平均気温はすでに1.09度上昇しているからです。

温暖化を抑えるためには二酸化炭素の排出量を制限しなければならないのですが、現在のペースで排出を続ければ、カーボンバジェット(炭素予算)は後10年で使いきってしまう計算になります。

とはいえ、IPCCは各国が努力して脱炭素社会の実現に取り組めば、まだチャンスはあるといいます。2050年にカーボンニュートラルに達することができれば、今世紀末には気温上昇を1.4度に抑えることができるという計算になるのです。

世界で起きる異常気象

世界中で気象災害が相次ぐ中、私たちは今が気候非常事態であるということを実感として経験しつつあります。

今年はカナダや米国西部を熱波が襲い、死亡者も出ました。カナダでは49.6度という観測史上最も高い気温が記録されました。先月は大雨による影響でドイツやベルギー、オランダなどで洪水があいつぎました。さらに数日前はイタリアのシチリア島で48.8度というヨーロッパで観測史上最高気温がみられました。

温暖化が進むにつれて、世界各地で熱波や豪雨と言った異常気象の頻度や強さが増し、50年に一度の高い気温が観測される頻度は産業革命前に比べ4.8倍になっています。IPCCは、平均気温が1.5度上昇した場合はこれが8.6倍に、2度上昇した場合は13.9倍になると予測しています。

大雨の場合、10年に一度の豪雨の頻度は現在は1.3倍ですが、これが1.5度上昇で1.5倍、2度上昇で1.7倍になると予測されています。

IPCC報告書では様々なシナリオを想定したのちに、2050年までに実質排出ゼロを達成することで、今世紀末には気温上昇を1.4度に抑えることができるという可能性を示唆しています。

IPCCは温暖化を予防するための具体的な緩和策について、来年報告書を発表する予定です。

グレタのメッセージ

スウェーデンの環境活動家グレタ・トウーンベリはこの報告書について

「ここで報告されていることはこれまでの科学者の研究ですでに分かっていたことで、私たちが緊急事態にあるということを確認したに過ぎない。私たちは今こそ各国政府に気候変動に取り組む行動を強く訴えなければならない。」と語ります。

グレタは米国メディアによるインタビューで「気候変動問題についてスウェーデンと米国で一般国民の見方は違うか?」と質問され、答えました。

「米国では気候危機が信じるか信じないかという問題になっているが、スウェーデンでは事実として議論されています。」

これについては、私もイギリスと日本での気候変動問題についての温度差の違いと重なる部分があると感じます。

異常気象と温暖化

イギリスは夏でも気温が低く、台風もなく、温暖化による被害を直接感じにくいどころか、今より少し暖かくなるのならうれしいくらいなのですが、気候変動問題についての関心はかなり高いと言えます。

けれども、夏の酷暑や今も西日本で起きている大雨や台風、それに付随する地すべりなどの被害が頻繁に起きる日本では、気候変動に対する一般国民や政府の関心が少ないように見うけられます。

産業革命前に50年に1度だった熱波の頻度は今は10年に1度になっています。気温上昇が1.5度になると、この頻度は5年に1回になると予測されます。豪雨や干ばつも同様です。

1時間に50ミリ以上の「非常に激しい雨」の頻度は気温が2度上昇することで1.6倍に増え、4度では2.3倍に増えます。

大気中の水蒸気量が増えるため、勢力の高い台風が日本に上陸する頻度は増え、沿岸の海面水位が上がることで、高潮や津波に夜浸水被害のリスクが高まります。海面水温が高くなることは災害だけではなく、漁業にも影響が起きてきます。

このような異常気象と温暖化を直接的に結びつけるべきではないという声もありますが、これまでの様々な研究から温暖化は大雨や台風などの被害を大きくしているという知見が共有されつつあります。

先月、ドイツなどヨーロッパ中部で起きた洪水被害を視察したメルケル首相やEU首脳はこのような被害が気候変動と関連しているとして、対策を進める必要があると語りました。

ドイツの洪水と気候変動問題

気候変動問題への世代間ギャップ

グレタは米国メディアによるインタビューで、彼女の訴えと各国のリーダーや一般民の温度差についてこう語りました。

「気候危機は今の大人にとっては自分が死んだ後の問題だと思っているので重要視されません。けれども、私たち若者にとっては自分の将来に直接関係があることなので、危機感があるのです。」

私たちの大人世代は、その生活様式や消費行動によって、気候変動問題に寄与しています。具体的には、飛行機や自動車に乗ったり、リユースやリサイクルをせず、使い捨ての商品を買い続け、捨て続けるなど。とはいえ、その影響は今日明日出てくるものではないので、気候危機などという問題を考えることなく毎日を暮らしています。

けれども、私たちの行動のツケは未来の子供たちが背負うことになるのです。そのことをわかっているから、グレタのような若い世代は何もしない、考えない大人に対していらだちを感じているのです。

それでは私たちはどうしたらいいのでしょうか?グレタはこう答えます。

「私たち一人一人が今何か一つするとしたら、正しい情報を知り、状況を理解して、声をあげ政治に影響を与えることです。」

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