イギリス「緑の産業革命 Green Industrial Revolution」と日本の取り組み

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EV Car
イギリスでは気候変動問題に関する政府の取り組みについて意欲的な発表が相次いでいます。日本でも菅新政権になってから環境問題に対して積極的に取り組む姿勢が出てきて、国際的にも評価されています。ガソリン車禁止についての目標も定まりつつある両国の、脱炭素化社会に向けての取り組みについてみていきます。

2030年CO2削減目標を68%に

今週英ジョンソン首相が2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも68%削減する目標を発表しました。これまでの目標の50%だったのですが、これを引き上げることにしたのです。

この発表をするにあたり、ジョンソン首相は気候変動問題について「地球規模での取り組みが必要だ」としています。

12月12日は地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の採択から5年になるのを記念する国際会議がオンラインで開かれることになっています。イギリスは各国に気候変動対策の重要性を呼び掛けていく方針です。

緑の産業革命

数週間前にイギリス政府は気候変動対策に取り組むため「緑の産業革命(Green Industrial Revolution)10 ポイント計画」を発表しました。

2050年までに温暖化ガス排出量をネットゼロとするために、EV化や再生可能エネルギー促進など10項目に120億ポンド(約1兆6千億円)を投じるとするものです。

この10項目は下記のとおりです。

  1. 洋上風力推進で6万人の雇用創出
  2. 低炭素水素製造能力増加
  3. 原子力革新で1万人の雇用創出
  4. 電気自動車へのシフト
  5. 公共交通機関、自転車、徒歩を推進
  6. 排出量ゼロの航空機・船舶テクノロジー開発
  7. 住宅や公共の建築物の環境負荷減少と、エネルギー効率の向上
  8. 二酸化炭素回収、貯蔵技術を開発し5万人の雇用創出
  9. 自然環境保護、洪水対策や植樹
  10. グリーン金融を推進し、緑の10ポイント計画を支える

2030年ガソリン車販売禁止

「緑の産業革命」政策の目玉として話題になっているのが、ガソリン車とディーゼル車の新規販売禁止を2030年に前倒しする方針です。イギリスでは2017年には2040年だった目標を2020年2月に5年早めて2035年にしたばかりですが、さらに5年前倒しということになります。

ハイブリッド車も禁止対象になっていますが、こちらは2035年が目標と少し余裕があります。

イギリスは温暖化ガス排出量を2050年までにネットゼロとする目標を法律化しましたが、この目標の達成のために自動車業界もEVシフトへの加速が必要だと判断しています。とはいえ、現在のイギリスのEV車のシェアは1%にも達しておらず、これからかなりの努力が必要となってきます。

イギリス政府の計画では、電気自動車普及のために13億ポンドを投じて、路上や家庭の充電スタンドを整備したり、EV車購入補助金5億8200万ポンドなどを通じて普及を後押しするとしています。EV用電池生産のためにも5億ポンドを支給することも決定しています。

イギリスでは現在乗用車生産台数の半分近くを日産やトヨタなど日本メーカーが生産していて、電気自動車に関しては、日産自動車がサンダーランド工場でEV車リーフを生産しています。

規制の前倒しに加え、ハイブリッドを得意としてきた日本メーカーも、EV化対応の加速をまぬがれないでしょう。

イギリスの意欲の背景

イギリスは新型コロナウィルスで来年に延期になったCOP26(気候変動枠組み条約締約国会議)で議長国を務めることになっています。

それで、その前に気候変動取り組みのリーダー国となる意欲を見せています。

自らがお手本を示すことで、この会議で諸外国にも排出ゼロの公約を求めることをねらっているのでしょう。

Brexitを目前に控え、気候変動問題に意欲的なEUと同様、環境分野における国際的な取り組みの舞台でも主導的な役割を果たしていきたいという考えもあるのだと思います。

日本も2050年までにネットゼロ

日本でも菅首相が2050年までにCO2排出実質ゼロを目指すと表明しました。

「2050年までにネットゼロ」菅首相発表に国際的評価

菅首相は「温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし成長につながるという発想の転換が必要」と語っています。

この発表を欧州では、環境分野では後れを取っていた日本もやっと足並みをそろえる気になったかという半ば称賛、半ば安堵のような印象で受け止めていました。

米国でもバイデン新政権の誕生でますます世界は気候変動問題解決に向けて国際的に協力していく傾向が強まるでしょうから、先進国としては遅くとも、ぎりぎりのタイミン
グでの発表だったと思います。
 

米国大統領選挙と気候変動問題:バイデンはパリ協定に再加入

2030年代半ばにガソリン車禁止

今週はさらに、日本政府がガソリン車の新車販売を2030年代半ばに禁止する方向で最終調整に入ったという報道がありました。

日本の場合は、トヨタなどのメーカーが得意とするハイブリッド車(HV)も引き続き生産を許し、電気自動車と並行しての規制となるようです。

菅新政権になってから、脱炭素化に向けての政策が次々と発表されるようになったのは歓迎すべきことです。

日本でもやっとSDGsやESG投資などについても関心が高まっているようなので、これから一般の意識も高まっていくのではないかと期待されます。

環境問題意識の遅れの理由は?

これまで、日本ではこの分野に関して欧米諸国に比べてどうして問題意識が低いのかと不思議に思っていました。

どうも日本では気候変動対策はコストがかさむ厄介な重荷であり、経済政策に力を入れるのが先決であるとの声が大きいようです。

また、気候変動問題に対しては、懐疑派の声が大きいということもあるようです。私の経験でもたまに日本の書店に行くと、気候変動に懐疑的な本がたくさん並んでいるのに異様な印象を受けることがありました。

米国でもトランプ大統領のような懐疑派の声もありますが、欧米諸国ではおおむね科学者の説明が信頼されていて、懐疑派の声は年々静まってきています。懐疑派の急先鋒であった米国石油業界でさえ最近は地球温暖化を認めています。

欧州では特に、脱炭素化への取り組みをコストと考えるのではなく、新しい産業を生み出し、経済的な競争力をつける手段としての可能性を秘めた機会であるととらえる考え方が主流を占めるようになってきました。

日本の技術力で危機をチャンスに

日本でもかつて1970年代のオイルショックの際に、省エネルギー分野で世界にお手本を見せたことがありました。

もともと資源の少ない国だからこそ、エネルギーリスクから身を守るために各企業が技術革新を行ったのです。

世界に名だたる技術力を誇る日本の産業界には、今も危機をチャンスととらえ挑戦する力があるはずです。

政府が長期的な視野にたってヴィジョンを掲げ、産業界をリードしたり支援を提供することで、その目標に向かって民間企業がテクノロジーによる解決策を練ってゆくという図式を現実化させていくことがこれからますます必要となっていくでしょう。

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