新型コロナウイルスでロックダウン寸前のイギリスの状況と英政府の対策

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
Cheers

いつもは地方創生や都市計画について書いていますが、今日はいくつか質問をいただいているので、イギリスでの新型コロナウイルスの状況についてお話します。

新型コロナの影響

私の住んでいるイギリスでも毎日の生活に新型コロナウイルスの影響が出てきています。飲食店や室内レジャー・文化施設、スポーツジム、映画館、美術館・博物館などすべて閉鎖になり、なるべく外出を控えるように言われています。

先週の金曜日で学校も閉鎖になり、今日から家族3人自宅でそれぞれ別の部屋にこもって仕事と勉強の毎日です。

とはいえ、私はいつもほとんど在宅で仕事をしているので変わりなし。連れも通常でも毎日職場に行くわけでもなくリモートワークも多かったし、先週からはミーティングなどもオンラインに切り替え、ずっと自宅勤務です。

イギリスの休校状況

16歳の子供は中高一貫校に通っていますが、日頃から学校のウエブサイトを通じて時間割、宿題、試験、成績やターゲットなどを確認する仕組みで、保護者への連絡もすべてe-mailです。

今日からはこのウエブサイトを通じて授業の課題が設定され、生徒はそれぞれ学習成果を提出し、それを先生がチェックして送ってくれるようです。

そしてスカイプ授業をするために、Skypeに登録するようにと連絡が来たと言っていました。この辺りは初めての取り組みなので、試行錯誤になるのでしょう。どうなるやら、興味津々です。

ちなみにイギリスの学校閉鎖が他のヨーロッパ諸国に少し遅れたのは、医療スタッフなどが子供を世話するために仕事ができなくなったり高齢の祖父母に預けるのを恐れたこともあります。

そのため、キーワーカーと呼ばれる職業に就く親の子供は引き続き学校に通ってもいいということになりました。医療、福祉、教育・保育、警察、消防、交通、公的機関などで必要な仕事をする人たちです。

特別なニーズがある生徒、家庭でネグレクト(虐待や育児放棄)などが疑われる生徒も対象です。さらに、通常給食が無料になる家庭の生徒にはランチ・バウチャーが配布されるということです。

イギリスのNHS国民医療

さて、そんなイギリスではロンドンを中心に新型コロナウイルス感染者が増えてきています。データを見るかぎり、イタリアの2週間後をたどっているということで、このままの感染率で行くと来週あたりイタリアのように、一度に重症者が多数出るために医療レベルが追い付かないという状況に陥りそうです。

イギリスのNHS国民医療制度はすべての国民に無料で医療サービスを提供するという戦後イギリスの「ゆりかごから墓場まで」社会福祉政策の最後の砦とも言えます。サッチャー以来、民営化や市場経済の影響が進んできた中、イギリス国民は医療だけはすべての国民に平等に与えられるべきだと信じているのです。

けれども近年の保守党の緊縮財政で、公的資金のみに頼るNHSはただでさえ資金不足に苦しみ、これまでぎりぎりのレベルでやってきました。

コロナによって重症患者が一度にたくさん出るようになると、とても対応しきれないでしょう。イギリス国民もそのことはよくわかっていると思います。

今はとにかく挙国一致で助け合おうという戦中戦後のような精神で、Brexitで分断された国が一つにまとまりつつあるような感がします。新型コロナウイルス対策に関しては、日頃は何かと政府を批判する野党も政府の政策についてあまり異論を語っていません。

英政府のコロナ経済対応策

コロナ騒ぎで医療や健康も心配ですが、経済についての不安も大きいのはいうまでもありません。

航空や旅行業界など、すでに影響が出ている分野に加え、これからは飲食店やエンタメ業界など経済的打撃を受けるビジネスが多く出るし、失業を心配する人も多いでしょう。

イギリス政府は打撃を受ける可能性のある企業や国民への経済対策措置を発表しました。

  • 従業員の雇用を維持するために、給与の8割を月額2500ポンド=約33万円まで政府が支給(すでに影響を受けている企業・従業員のために、3月1日までにさかのぼって請求可能)
  • 企業によるVAT(消費税)の納付を6月まで延期
  • 小規模企業に助成金や無利子の融資提供
  • 所得税納付期限を年末まで延期
  • 家賃補助
  • 低所得者向け補助金を増額

これまで厳しい緊縮財政を続けていた右派保守党としては画期的な政策と言え、野党や労働組合もおおむね支持する内容となっています。

さらに、イギリス全国にいるホームレスの人々をホテルの空き室を利用して収容するための予算も計上され、すでにロンドンのホテルにホームレスの人々が収容されているということです。

相互補助の精神

政府だけでなく、企業やチャリティー団体から一般市民に至るまで相互補助の精神が伝わる情報を毎日のように見聞きします。企業や個人からコロナ対策のための寄付が相次いだり、ダイソンやロールス・ロイスなどの企業が人工呼吸器の生産を始めたと聞きました。

スーパーマーケットなどでは、高齢者やNHSなどのキーワーカーが買い物をする時間を優先的にもうけるところが多くなっています。

うちの近所では両隣と向かいの人くらいしか知り合いがいなくて、それもたまに挨拶をするくらいだったのですが、通りに住む人たちのWhat’sApp(日本のLINEのようなスマホアプリ)グループができました。何かあった時に助けあえるようにというわけです。

高齢者や自宅隔離しなければならなくなった人のために買い物など手伝うことができたら便利ですよね。こういう時は「遠くの親戚より近くの他人」が頼りになるので安心です。

嵐の前の静けさ?

それやこれやで、「嵐の前の静けさ」なのかもしれませんが、今のところ何事もなく普通の日々を送っている毎日です。

実は春休みとなる4月1日から家族3人で日本に一時帰国の予定だったのですが、それもあきらめました。その間、仕事や訪問予定もあったのですが、すべてキャンセルせざるを得ませんでした。

ただタイミング的に、冬の長いイギリスの春の時期ということが救いです。この週末は天気にも恵まれ、私は庭仕事に励み、連れと息子は長いサイクリングに出かけ、アウトドアを楽しみました。

同じようなことを考えたイギリス人が公園やビーチなど野外の人気訪問スポットに集まりすぎて問題にもなっていましたが、その気持ちもよくわかります。

でも、今は一人一人が注意してコロナに感染しないように、というよりは自分が感染しているかもしれないのだから他の人につつさないような行動をとることが大切ですね。

日本でも、お花見のいい季節ですが、まだまだ油断は禁物。

外出するなら人との接触を避けて、春を楽しんでください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

メルマガ登録フォーム

* indicates required




コメントを残す

*

CAPTCHA