英グラスゴーでCOP26が終了:その成果は?

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Alok Sharma

10月31日からイギリスのグラスゴーで開かれていた国連気候変動対策会議COP26が11月14日に終了しました。COP26では何が合意されたのでしょうか。採択された合意文書の概要とその評価について紹介します。

COP26とは

「そもそも、COP26って何?」という人には、下記の記事でわかりやすく紹介しているので参考にしてください。

https://globalpea.com/cop26

COP26では、参加国が採択文書をまとめるのに最後の最後までもめて、1日延長して約200か国が合意文書を採択しました。
何度も練り直された合意文書は最後の土壇場でも内容を弱める修正をせまられることになりました。

COP26会長のアロク・シャーマが「多くの皆さんの期待通りの結果にならず残念ですが、この取り決めを守らなければなりません。」と語り、声を詰まらせると、言葉が出なくなった会長に会場から拍手が送られました。
このように難航を極めた会議で、それでも「気温上昇を1.5度に抑える努力を続ける」ことが参加国の総意として採択文書に入れられたことは評価されるべきでしょう。パリ協定では「2度未満、できたら1.5度」という目標だったので、この点では一歩前進したということになります。

けれども、その目標を達成するための具体的な取り決めはなされたのでしょうか?

COP26採択文書の内容

採択されたCOP26文書の概要は次の通りです。

1.温室効果ガス排出削減目標(NDC)

各国の温室効果ガス排出削減目標であるNDC(Nationally Determined Contributions)については、ほとんどの国がCOP26開催前にすでに提出しており、それについての変更はありませんでした。
各国が提出したNDCを全部合わせた水準では気温の上昇は2.4度にしか抑えられないと科学者は予想しています。そのため、このNDC水準のままでは十分ではないということについて各国は認めました。
1.5度の目標に達するためには、来年に向け各国がNDCを改善するように努力し、来年末に再度検証しあおうということになりました。これまでNDCは5年ごとに見直すという事だったのを1年に短縮したわけですが、どれだけの国が今のNDCを改善することができるのかが注目されます。

2.パリ協定ルール

パリ協定を実行するにあたってのカーボンクレジットのルールについての取り決めも合意されました。パリ協定6条の排出枠取引ルールについてはこれまでも議論されてきましたが、なかなか合意に至らなかったのが、今回やっと決まったかたちです。
排出枠取引をする国家の行動に透明性を持たせることが盛り込まれ、二重計上とならないようにするなど、排出枠取引の仕組みが整備されたことで、これから各国間での国際排出削減取引の前進が期待されます。

3.脱石炭

温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電の廃止については最後までもめました。欧州諸国や気候変動で被害を受けている島国が脱石炭を強く訴えているのに対し、中国やインドなど石炭火力継続を望む国々が抵抗したからです。
何度か修正を重ねた末の、石炭利用の「段階的廃止 (phase out)」を加速するとした決議案にインドが最後の土壇場になって反対し、「段階的削減 (phase down)」という表現に弱められました。いつまでにという具体的な期限もなく、かなり弱い表現ともいえます。
とはいえ、これまでのCOPの合意書で石炭火力制限についての取り決めはなかったので、これでも重要な一歩だとは言えます。

4.気候変動対策への資金援助

気候変動によって被害を受けている途上国は対策を行うために必要となる資金を先進国が負担することを強く要求しています。この額を2025年までに少なくとも2倍増やすという要求は受け入れられました。
先進国が2020年までに年間1000億ドルの援助をするという目標は未だに達成されていません。これについては、2025年までに議論を続ける枠組みを作るということにとどまったことで、途上国から不満の声が聞かれました。

5.その他の個別声明

参加国すべての合意が必要な採択文書とは別に、個別の事項について賛同する国や地域が声明を発表したものもあります。
石炭火力の段階的廃止には40以上の国や地域、メタン排出量を削減するという合意には約100の国と地域、2030年までに森林破壊をやめることを約束する声明には130以上の国や地域が名前を連ねました。
さらに、温室効果ガスの2大国排出国でもある米国と中国が「パリ協定の目標を達成するために協力する」との共同宣言を発表しました。経済や安全保障では何かと対立する両国がこうした声明を出すことは異例で、これから実際にどのような協力がなされるのか注目したいところです。

COP26後、これからどうなる?

COP26では世界の気温上昇を1.5度に抑える目標については合意しましたが、そのために各国が何をしていくのかを具体的に決めたわけではありません。NDC目標にしてもさらに見直して改善したものを来年末に確認しあうということになっていますが、それができる国がどれだけあるのでしょうか。

世界中の代表が集まって気候変動対策について話し合うCOPですが、グレタ・トゥーンベリなどの環境活動家やNGOに言わせると「COPを26回やっても空っぽの約束ばかり。口ばかりで行動がともなっていない」と批判しています。

さらに、先進国と途上国、海面上昇や高気温で気候変動の被害の最前線にいる国々とそうではないところなど、それぞれの状況や意見が異なるために世界が分断されて、気候変動を取り組むための個々の政策にすべての合意を取り付けることが難しくなっています。

翌年2022年のCOP27はエジプトで、2023年のCOP28はアラブ首長国連邦(UAE)と、いずれも中東で開催される予定です。

今回持ち越した課題に前進があるのでしょうか。それとも、またグレタたちに「口先ばかり」と非難されることになるのでしょうか。

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