イギリス古都ヨークの歴史建造物であるティールームの壁に描かれたティーポットと文字のサインが都市計画許可を拒否され、撤去を命ぜられました。あなたはこのサインについてどう思いますか?
The Old York Tea Room
ヨークはイギリス北部にある古都で、ヨークミンスターをはじめ、歴史的建造物が多い街。ウォールで囲まれたオールドタウンの大きなエリアがConservation Area (保存地区)となっていて、歴史的、建築的に重要な建造物として指定されているListed Building(指定建造物)も多数あります。このティールームがある「レディー・ロウ(Lady Row)」も保存地区の中にあるだけでなく、1316年に遡る歴史がある建造物としてGrade I(最重要)指定されています。
このティールームのオーナーは建物正面の壁の漆喰を塗り替え白く塗った際に「The Old York Tea Room」という看板文字とティーポットの絵を地元アーティストに依頼して描いてもらいました。
(写真出典:BBC Emily Johnson)
本来は指定建造物にこのようなサインを掲げるには都市計画許可が必要なのですが、オーナーはそれを知らなかったということです。しかし、このサインに反対した人がヨーク市に訴え、都市計画当局はオーナーに「事後(retrospective)」の都市計画許可申請をするように依頼。オーナーがこの申請をしたところ、地元からは賛否両論あったそうですが、結局この申請は不許可となります。
オーナーは自治体ヨーク市の決定に不満だとして上告 (appeal)しましたが、このほど、都市計画検査局によっても不許可という判断となり、撤去しなければならないことになりました。
不許可の理由は?
この地域の都市計画許可を管轄するヨーク市都市計画委員会も、イングランド全土のアピール案件を扱う都市計画検査局(Planning Inspectorate)も、不許可の理由は同じです。
イギリスでは歴史的建造物は特別に保護されていますが、この建物はその中でも2.5%しかないGrade1ということで、9,000しかないうちのひとつ。外観は質素ながらもヨークミンスター並みに重要なものなのです。その建物の正面に描かれたサインは「有害な影響」を与えていると判断されたということ。
サインの文字じたいは伝統的なものであり、ティーポットの絵は「遊び心」があるものの、その大きさが建物正面を占領してしまい、建物のシンプルな建築形態、特徴、外観が損なわれてしまうとされました。このサイン自体が指定建造物に有害な影響をおよぼすだけでなく、これを許すことによって「望ましくない前例」を作ってしまうということが特に問題なのでしょう。
というのも、このレディー・ロウは複数の店舗からなっているのですが、これまでにも少なくとも2つの無許可の標識があったということです。そのうちの1つは中華料理店の看板でしたが、その後、撤去されたとのこと。どのような看板だったのかはわかりませんが、そういう看板を一つでも許してしまうと、「それでは、うちも」と好ましくない看板を付ける店が増え、累積的に大きな影響を与えてしまうことになるだろうという事は想像できます。
ティーショップのオーナーは、看板は顧客を引き寄せ、売り上げを伸ばすために重要だと主張しましたが、このティールームはかなり人気があるようなので、代わりの看板がその存続に悪影響を及ぼすとは考えにくいでしょう。
あなたはどう思いますか
この看板に反対して一人でプラカードを掲げて店頭に立った人から始まった論争ですが、中には、ティーショップの顧客をはじめ賛成する人もいて、都市計画申請を支持する手紙も260人以上から届いたそうです。
「かわいい」「すてきなサインだと思う」という人も多くいます。なるほど、ティーポットの絵は魅力的と言えるし、サインのレタリングも歴史ある建物に合った伝統的なスタイルであり、奇抜な色を使っているわけでもありません。もう少し小さいものが軒下にあるくらいだったらいいかもしれません。
あなたはどう思いますか?
参考記事:
https://www.bbc.co.uk/news/articles/c204y438p3no
https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-york-north-yorkshire-67476058
https://www.yorkpress.co.uk/news/23723291.old-york-tea-room-sign-ladys-row-goodramgate-row/