世界遺産登録を抹消されたリヴァプール再訪

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Liverpool path

2021年7月にイギリスのリヴァプールがユネスコ世界遺産登録から抹消されることが決まりました。リヴァプールにはしばらく行っていなかったので、世界遺産登録エリアがどうなっているのか気になり、久しぶりに再訪することにしました。その日は10月9日ですが、これは何の日か知っていますか?(答えは最後に)

ユネスコ世界遺産登録抹消

リヴァプールは18世紀以降国際的な港湾都市として栄えた街で、当時の海運倉庫や造船所などの建築物が数多く残っている「海商都市」地区が2004年に世界遺産に登録されました。

けれども、登録後に世界遺産区域内で行われた再開発にユネスコは懸念を示し、2012年には世界遺産危機リストに指定されていました。そして2021年の7月のユネスコ世界遺産委員会で、リヴァプールの世界遺産登録抹消が決まりました。

その詳しい経過についてはこちらの記事をごらんください。

https://globalpea.com/liverpool-world-heritage

リヴァプール再訪

リヴァプールには何度も来ていますが、世界遺産登録の対象となっている「海商地区」エリアは、アルバートドックや博物館が立ち並ぶ部分にしか行かないことがほとんどです。その北に広がる、あまり使われていなかった地区は長らく見ていなかったので、どうなっているのかよくわかっていませんでした。

最近になって、このあたりで様々な新開発が行われていたことは知っていました。資料を見ると、以前見た時に比べてかなり変わっているようですが、どうもピンときません。こういうのはやはり現地に行き、自分の目で見て足で歩いてみないとわからないものです。

この辺りはかつては造船業などで栄えたところで、ドックや工場などが立ち並んでいました。けれどもそういう産業が衰退してからは、使われないままの古い建物が打ち捨てられるように立っていたり、崩れそうな港湾施設の周りにフェンスが張ってあったりして、殺伐とした風景でした。

河川沿いの何もないところなので人通りもなく、1人で歩くのは怖いようなエリアで、前に見たと言っても車で通りすぎただけです。車窓から見える風景も寒々として、とても車をとめようと思えるようなところではありませんでした。今回も1人で行くとなると少し心細いので、少しでも観光客などがいそうな土曜日の真昼間に行くことにしたのです。

ピアヘッドから北へ

Beatles

海外からの入国も緩和されているイギリス(ワクチン接種済なら隔離なし、入国後検査のみ)には、観光客もまた戻ってきつつあり、リヴァプールも例外ではありません。ピアヘッドに立っているビートルズの像の前には観光客がひっきりなしに記念写真を撮っていました。

そこから南はアルバートドックや博物館などが並ぶ、おなじみのエリアです。代わりにあまり足を踏み入れたことがない北側を、巨大なフェリーがいきかうマージー河川沿いに歩いてみました。

Liverpool path

ここは足に心地よい石畳の歩道に黒いランプポストがずっと続いていて、ベンチやフェンスなどのストリートファーニチャーもデザインが統一され、デートや散策にぴったりな雰囲気のいい散歩道となっています。

そして、これまで見たことがなかった新開発のホテルやマンション、企業のオフィス用のモダンなビルが道路の右側にポツンポツンと見えてきます。その間は駐車場として整備されていたり、まだ空き地のままそのまま残っていたり。

新しい開発のそれぞれの建築スタイルは様々、高さや形もいろいろであまり統一感はありません。それぞれの建築家、開発者が自分たちの思いのままに開発した感があり、リヴァプールの都市計画はリバタリアン的なのだなという印象を受けます。都市計画許可制度を通して、アーバンデザインルールを示したりすることで、もう少し全体の景観を考慮に入れたデザインに誘導することもできたはずだし、そうしている自治体もあります。

衰退か開発か?

とはいえ、衰退都市リヴァプールで数10年も打ち捨てられていた荒廃地、ノーゴーエリアとなり犯罪も多発していただろうと思われるところに新しい開発計画ができるとなると、市当局も地元の人も無条件で歓迎してしまいがちという気持ちもわからないではありません。
Liverpool path

また、Planning Agreementで交渉したのであろうと思われる、地域や一般の人向けの配慮もあちこちに見られます。

たとえば、新しいビルの周りは立ち入り禁止になっておらず、誰でも通れるようになっていてその裏側をずっと通り抜けできる歩道ができ、散歩やジョギングする人も見られます。

そこもランプポストやベンチ、ごみ箱など統一されたストリートファーニチャーと共にきれいに整備されています。歩道専用のしゃれた橋やちょっとした広場も用意されていて、そこでコーヒー片手にくつろぐ人もいます。

誰も足を踏み入れなかったNo Go エリアにこれだけの人がいるというだけで、女性一人でも道を歩くことができるのは安心です。

Liverpool DangerLiverpool path

歩道の河岸側はまだ崩れ落ちそうな港湾設備などが残っていて、入れないように「DANGER」フェンスが張ってあったりします。

けれども、人通りもあるし、ビルの窓から誰かが見ていると思うと一人でも怖い気はしません。

夜でも街灯がついているし、隣接するビルに住む人の部屋の明かりもついているだろうから、安心感がありそうです。

街というものは、やはり人がそこにいてこそのものであり、使われないままただ博物館として保存しておけばいいというものではないのだと、リヴァプールの人はわかっているのでしょう。「世界遺産」というものはその主な目的が「遺産保持」にあるので、それと相いれないのは仕方ないのかもしれません。

リヴァプールはビートルズを生み出した街です。古ぼけた大英帝国の遺産にしがみつくのではなく、自分たちで新しい風を起こすんだという気風がこのような形となってあらわれているともいえます。

Liverpool Footpath

 
 


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1980年に殺害されたジョンは、生きていたら81歳


 

 

リヴァプールの再開発についてはこちらの「地方創生:イギリスに見る地域活性化事例集」でも詳しく紹介しています。
他の街と共に地方創生・地域再生についてのイギリスの事例を集めた資料です。

日本の地方創生のヒントになる手法が載っているので、参考にしてください。
「地方創生:イギリスに見る地域活性化事例集」

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