前回の記事で都会の待機児童や日本の少子化問題を緩和するためには地方が女性、特に若い女性を引き止め、惹きつけるところであるべきという話をしました。その続きとして地方創生の鍵は女性にあるということをお話します。
少子化の背景
少子化問題の背景として、いくら地方で出生率が上がっても出産予備軍となる女性が地方から都会に流出してしまうため、子供の数は減りつつけるという状況があります。
母親候補となる若い女性が教育機会や仕事、または自由な生き方、華やかな生活スタイルを求めて都会へ流出する中で、出生率がいくらあがっても、子どもの数は減るばかりです。
地方が都会から移住者をつのっても、若い女性はなかなか戻ってきません。
なかには男性に仕事を与えたら妻がついてくるという考え方を持つ人もいます。けれどもそれは専業主婦が多かった時代の名残りで、すでにそういう女性は少数派です。今では、結婚して子供を持ったあとも働き続けたい、または一時休職してもまた仕事に戻りたいという女性が多数派です。
若い女性のライフコース
2015年の出生動向基本調査では、18 ~ 34歳の未婚者女性を対象に理想と予定のライフコースを調べました。
若い女性のライフコースとして以下の5種類に分けてどれが当てはまるかを質問しています。
1 専業主婦コース=結婚し子どもを持ち、結婚あるいは出産の機会に退職し、その後は仕事を持 たない
2 再就職コース=結婚し子どもを持つが、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て 後に再び仕事を持つ
3 両立コース=結婚し子どもを持つが、仕事も一生続ける
4 DINKS コース=結婚するが子どもは持たず、仕事を一生続ける
5 非婚就業コース=結婚せず、仕事を一生続ける
左は「あなたの 理想とする人生はどのタイプですか」をあらわし、
右は「理想 は理想として、実際になりそうなあなたの人生はどの タイプですか」を表しています。
これを見ると理想も予定も多いのは、子供を持っても働き続けるか、一度は退職しても再就職するコースです。
理想は専業主婦を希望する女性でも実際の予定となると、家計や子供のため、将来の不安のために仕事をしたいと思うのも自然のなりゆきでしょう。
高度経済成長からバブル期には可能だった、男性一人の収入で家族全員を養うことが難しくなってきているし、日本独自の終身雇用制度も先行きが怪しくなっている今、ほとんどの家庭では「大黒柱」一本に頼ったままでいるのは心もとないばかりです。
こういう話をすると「近頃の若い女性は結婚をしたがらない」「結婚しても子供をもちたがらない」という人もいますが、実はそういう人も少数派です。
都会に暮らす女性といえども、結婚はせず、結婚はしても子供はほしくないという人は1割にも満たず、ほとんどの人は条件さえ合えば、結婚をしたいし、いつかは子供をほしいと希望しているのです。
それがかなわない理由は(不妊などの理由はべつとして)「出会いがない」「結婚したくなるような男性がいない」「結婚しても子供をもてるような経済環境、生活環境がそろわない」といったところでしょうか。
女性の教育と仕事の機会
女性が地方から都会へ出ていくきっかけとなる人生ステージを考えると、まず第一は大学進学、次は就職、そして転職や結婚となるでしょう。
そもそも今でも「女に大学教育は必要ない」と考える人もいるし、最近話題になった大学入試におけるあからさまな女性差別の現状を見れば、地方の女性が教育の機会を得て都会に行くということすら特権であると言う考え方もあるでしょう。
事実、今でも保守的な田舎では「女は学をつけるもんじゃない、嫁にいけなくなる」と私が若かった頃のような時代錯誤的な考えを持つ人さえいると聞き、日本はここ30年何も変わってこなかったと唖然とすることがあります。
その中でも機会を得て都会で高等教育を受けた女性は田舎に戻ることは少ないでしょう。地元にはその才能を活かすに値し、十分な収入を得られる仕事があまりないからです。
大学には行かず地元に残った女性にしても、地方の伝統的な産業である農業や漁業分野での雇用はあまり魅力的ではありません。農業が主力の新潟県、秋田県など東北地方から東京圏への女性の流れが顕著なのはこれを裏付けているといえます。
地方で移住者を呼び込むために雇用を生み出す産業を誘致しようとするところもありますが、たとえば自動車工場のようなものは男性には適していても若い女性にはあまり魅力的にはうつりません。
IT化が進み、どこにいても仕事もコミュニケーションも可能になった現代で、他の国ではシリコンバレーのようにIT関連を主に、ヴェンチャー企業があちこちの地方や小さな街で起こっているのに、日本はこういった分野でさえも未だに東京一極集中しています。
若い女性が希望するようなオフィスワークが都会だけでなく地方にも分散されるようになったら、出産予備軍となる女性が地方から東京に流れ続ける波が少しは緩和されるでしょう。
そのためにも、政府は率先して政府機関や公的機関を東京から地方に移すことに本腰をいれるべきです。お手本を見せることで、民間企業にそれを見習うところが出てくるでしょう。
今年は東京五輪期間の混雑を避けるため、そして新型コロナウイルスの流行を防ぐためにリモートワークが推進されるようになりました。これを機会に都会で満員電車に乗って都心に通勤せずとも仕事はどこでもできるということがわかれば、少しはこの流れに寄与するのではないかと思います。
私はイギリスの自宅で仕事をしていますが、イギリス各地、日本各地、ヨーロッパ諸国、パキスタンや中国など様々なところにいる人たちとコミュニケーションを取りながら仕事をしていて何の問題もありません。
日本に一時帰国するときは wifi ルーターを借りて、実家がある山口県の田舎の村で仕事を普通に続けています。
このようなことはたとえば、つい10年前には難しかったことです。せっかくIT環境が整ってその恩恵を受けることができるようになっているのだから、利用しない手はありません。
東京一極集中は仕事だけではない
若い女性にとって都会は憧れの場所でもあり、大学や仕事だけのためにそこを選ぶというものでもありません。かくいう私も若いときは田舎で暮らしていましたが、テレビや雑誌から垣間見る都会にあこがれていました。
けれども東京で暮らしてみてわかったのは、都会というものは華やかなだけではなく、混雑や渋滞、狭い居住空間や劣悪な環境など、悪いところもたくさんあるということ、そして都会の華やかさを享受するのにはお金が必要だということです。とはいえ、それは実際に住んでみないとわかりませんでした。
東京以外にも広島や福岡、金沢や仙台など「ほどほどの都会」があり、実はそういうところのほうが暮らしやすいということが今ではわかってきました。
けれども、イギリスなどと違って日本のメディアから流れてくる情報は東京のことがほとんです。女性が好んで読む雑誌やオンライン情報も東京のお店やファッションのことばかりで、地方都市のことは何もわかりません。
イギリスではメディアもこれほど偏っておらず、ブリストル、マンチェスター、エジンバラなどさまざまな街の情報が掲載されます。大学や就職の機会も、政府の政策もあって各地にあることもあり、若者の一極集中志向がそれほどありません。イギリスで有名大学というとオックスフォードやケンブリッジが思い浮かびますが、どちらも都会ではなく地方にあります。
このような背景があるせいか、若い女性に何が何でもロンドンで働きたい、暮らしたいという人はそれほどいないのです。
最近見た、Linkedin(リンクトイン)というビジネス用SNSのイギリス版広告にこういうのがありました。ロンドンのオフィスで働く若い女性が故郷での就職を夢見て、リンクトインを利用し地元のホスピスへの転職が決まったというものです。
ロンドンの狭い賃貸アパートをあとにして田舎で自分の家も購入し、週末には自然あふれる森を恋人と犬の散歩に行く様子を描いたもので、これがイギリスの若い女性の幸せというものなのだなと納得しました。
女性の地位とジェンダーギャップ
女性が地方を出ていくもう一つ大きな問題に「田舎は保守的な人が多く何かと束縛される」「親やしがらみから自由になりたい」「女は黙れという風潮がある」というものがあります。
親や親戚から「そろそろ結婚」とか「そろそろ子供」とか強要されるのが苦痛だとか、何か意見をいうと「女はでしゃばるな」と言われるというようなこともあるでしょう。
田舎で若い女性だったときに私が感じていたのは、女性であるということでその枠にあてはまる言動を期待される「空気」であり、それは強制的なものではなかったにせよ、自分の好きなように生きることができないという抑圧感がありました。
今となったらそんな空気など無視してやりたいことをやり、言いたいことを言えばよかったのだと思えます。でも、若いときには周りがみんなそうだったのでそういうものだと思って育ったので、その違和感を口にすることを思いもつきませんでした。
日本は男女格差を占めるジェンダーギャップ指数が153カ国中121位で、そのランキングは下がるばかりです。男女差別とか、昔に比べればずっと良くなったという人もいますが、その速度が遅く、他の国はずっと早く進んでいるからです。
私はイギリスで30年暮らしましたが、その間にイギリス社会の男女のあり方は大きく変わりました。イギリスに来た当時は専業主婦もかなりいたし、職場の上司に女性はまれだったのがずいぶん様変わりしました。けれども、日本に戻ると私が日本を出た頃とあまり変わっていないことに驚きます。
女性を男性の補助的な役割として扱ったり、仕事や生活のさまざまな分野で男女分業が当たり前に行われたり、女性の意見がはなから無視されるようなことは長い間慣習として根付いているため、日本の保守的な地方では、特に高年齢層には当たり前のこととなっています。
けれども、このような社会を変え女性を一人の人間として扱うようにしないと、若い女性が地方から都会に出ていってしまうのも仕方ないでしょう。
私は女性差別などしていないという人でも知らず知らずのうちに無意識バイアスがかかり、女性が職場や家庭で(心のケアも含む)無償ケア労働を提供するのを当たり前に思っていることがあります。
女性側も男性をたて、控えめであることが身に染み付いていて、自分の意見を述べたり、やりたいことをしたりすることをはじめからあきらめていることが少なくありません。そのほうが世の中スムーズにいくという暗黙の了解があり、波風を立てたくないという世間の知恵が働くのでしょうが、男女双方がこれまで「当たり前」としてきたやり方で本当にいいのかどうか考えるべきなのではないでしょうか。
ジェンダーギャップの問題や女性が働きやすい環境を整える課題は日本社会全体のものです。けれども、おおむね都会より地方でその問題はより根強いと言ってもいいでしょう。
地方の女性が都会に引っ越すことなく故郷に残る、または都会の人たちが地元に帰ったり地方に移住するために、女性が幸せに暮らせる環境が整える努力をしたらいいのです。
女性を活かす地方創生のメリット
これまで地方創生の鍵となるのが女性だと話してきましたが、ここでそのメリットをまとめておきましょう。
子供が生まれ、若い人口が増える
これまで話してきたように、地方に若い女性が残り、さらに都会や他の土地から女性が移住してくるようなところにすることで出産予備軍の女性が増えます。そうしたら、若者は地方で結婚して子供を産み、地方の人口だけでなく、国全体の子供の数も増えるでしょう。
私は女性を子供を生む機械のように考えることは好きではありません。でも、実際に若い女性のほとんどは理想としてはいつかは結婚したいと考えているし、子供を持ちたいと思っています。
それがかなわないのは出会いがなかったりお金がなかったりするというのが大きな理由です。
地方でいい出会いがあれば、結婚してその土地で子供を持つカップルは増えるでしょう。地方は都会に比べ生活コストもかからないし、待機児童の問題もなく、環境も整っているので子供を育てる障害も減るはずです。だから今でも地方は都会に比べ出生率が高いのです。
出生率に子供を生む女性の数をかけると子供の数も増えます。ということは、都会より地方に若い女性を増やすことで日本全体の子供の数が増えるということはかんたんな掛け算でわかりますね。
優秀な人材を余すことなく使える
地方でよく聞かれる言葉に「優秀な人材がいない」というのがあります。そして、その「人材」と言うのは地方の男性を対象に考えていることが多いのです。
全住民の約半分にあたる人々の貴重な知識や経験を「女だから」と無駄にするのはもったいないことこの上ありません。
女性にも高等教育の機会が与えられ、男女雇用機会均等法が導入された今、才能も意欲もある女性が多いのですから当然だし、それを生かさないのは地方の、そして国全体の機会損失とも言えます。
女性を積極的に活用することで、これまでになかった視点がもちこまれるようになるのもメリットです。
家事や子育て、生活の雑事や地域社会のつきあいなどのほとんどを女性に任せ仕事だけしてきた男性中心の職場に、生活に根付いた視点が持ち込まれることで新しい視点や考え方が利用できます。
働き方改革に役立つ
今現在女性が働くことの大きなネックになっているのが日本の多くの職場における長時間労働をはじめとする過酷な働き方です。さらに、新卒一括採用と終身雇用で社員が一つの会社にずっと働き続け、出産などによる休職やその後の仕事復帰という働き方が合わないこともあります。
会社の命令一つで長期出張や転勤を命じられるなど、欧米諸国から見ると人権無視に見えるやり方もまかり通っています。
これらの「滅私奉公」的働き方は、家庭のことをすべて丸投げできる女性(専業主婦)がいる男性がいることで成り立っています。
こういう働き方を変え、9時から5時の定時内で生産性を高め無駄なく仕事をこなしていく方法に変えることで女性が働きやすくなります。そして、このような働き方に変えることは女性のみならず、男性にもメリットがあるはずです。
若い世代、子供にいい影響を与える
いくら学校で男女は平等と勉強しても、家に帰るとお父さんは遅くまで仕事、お母さんは家で家事一切を引受け、お父さんが帰ってくると世話をするという日常を見ていたら子供はそれが当たり前と思って育ちます。
男の子は「料理の上手な優しい女性」と結婚したがり、女の子は「年収が高いいい仕事を持つ人と結婚して専業主婦」になることが普通と思うようになります。
地方で女性が活躍するロールモデルをつくることで、男女ともに働き、活躍できる様子を若い世代や子供が見てそれが自然だと感じるようになるでしょう。
その地方のブランドイメージが上がる
これだけ「男女平等」や「女性の活躍」が叫ばれている中、日本社会のジェンダーギャップ指数は良くなるばかりか、後退しています。
世界的な #MeToo 運動の流れなどにより、日本でも女性の間ではこのままではいけないという自覚が強くなってきています。今のところ、それを口に出す女性はまだ少数派ですが、女性ならほとんどの人が内心は同じ気持ちを抱えています。
そんな日本で、先進的な地方が先駆けて女性の活躍を推進することで、その地方のブランドイメージは上がり、注目されるでしょう。
対外的にも「選ばれる地方」になる
女性なら何かと男性の無償ケアラーだけ期待されるところより、自分を人間として扱ってくれる人権意識の高い先進的な地方で暮らしたいと思う人が多いはずです。
そういう地方には地元の女性だけでなく、都会や他の地方の女性からも魅力的にうつり、仕事やきっかけさえあれば引っ越してくる人も増えるはずです。
海外からも評価される
日本にいると不自然に感じないのかもしれませんが、ジェンダーギャップ指数がG7の中で最下位であるばかりか中国や韓国より下である日本は、海外から見ると女性の人権を無視し、男女差別が根強く残る時代遅れの国です。
この感想は日本人でも女性なら内心うなづくことがあると思います。それを表向きには言うのははばかれるので言わない人も多いでしょうが。イギリスに住む私がたまに日本に帰ると、とんでもないと思うようなことが今でもまかり通っていて驚きます。
このような状況の中、一歩先を行く地方が欧米諸国並みに女性に機会を与える方針を都会にも先がけて導入したら海外からも高い評価を受けるはずです。
国や他の地方のお手本となる
「地方創生」については政府が「ひと・まち・しごと創生」政策を推進しているし、女性の活躍についても安倍政権では力を入れているように見えます。
けれども私自身の経験から言って、実際に地方創生について仕事をする人や集まりに関わることがあってもほとんどの参加者は男性です。地方の集まりに行くと女性は裏でアシスタント的な仕事をしたりしています。
このような中、先駆けて女性を登用し実績を出してもらうことで、国や他の地方のお手本となるでしょう。
家庭や地方が幸せになる
最後に一番大切なことです。地方創生、少子化緩和、地域活性化などで一番大切なことは何でしょうか。
それは、子供の数が増えることでも、地域経済が潤って税収が増えることでもありません。
そうではなくて、地方に住む一人ひとりがより幸せになることです。
地方に住む住民の約半分である女性が無償ケアラーとしての役割だけを期待され、一人の人間として扱われないことで満足を感じるでしょうか。現状ではそれが当たり前であり、みなもそうしているから声を出すことなくその役割を演じている女性も多いはずです。
そうした状況を変えることで女性が、家庭が、そして地域全体がより幸せになって行くでしょう。
具体的な方策
地方を若い女性にとって魅力的なところにするにはどうしたらいいのか、その具体的な方策について話します。
教育や就職の機会
まずは、若い女性がわざわざ都会に出なくてもすむように、地方で満足の得られる教育や就職の機会を増やすことです。大学や専門学校で若い女性に有意義な教育を提供したり、その技能を発揮できる就職の機会を設けるといいでしょう。
女性が生き生きと成果を発揮できる環境を提供することで、才能のある女性に活躍してもらうことができます。生活に密着した思考ができる女性を家事育児介護要員として家庭にとじこめておくのはあまりにも勿体ないことです。
民間企業で女性を積極的に雇用し、活躍してもらうといいでしょう。それも男性のアシスタント的なものでなく、キャリア構築できる専門職や管理職、取締役といったマネジメント職に女性を抜擢することが大切です。さらに、働きながらでも仕事やキャリアアップに役立つ学習やトレーニング機会を提供することも大事です。
女性を管理職やシニアポジションに登用してロールモデルを示すことは、より若い男女や子供にポジティヴな影響を与えることができます。リーダー格となるロールモデルがいることで若い女性が目標を持ち、自らもリーダーの地位を目指すことを考えるようになるでしょう。
自治体人事と地方議員
地方自治体でできることは、自治体職員、特に管理職やシニアポジションに女性をどんどん登用することです。女性問題だけではなく、育児、教育、介護などの市民が抱える問題は女性のほうが理解が深く的確な対応ができることが多いでしょう。
そういう女性に就業しながらできる教育やトレーニングの機会を与え、スキルを磨いてもらい優秀な人材に育てていくという長期的な視点も必要です。
さらに、地方議会の半分は女性が占めるようになればバランスの取れた議論ができるようになるでしょう。そのためには子供を持つ女性が働きやすい環境を整えることも大切です。
以前、熊本市の市議会で緒方ゆうか議員が子連れで市議会に出席して問題になったことがありました。イギリスに住んでいる私がどうしてこのようなニュースを知ったのかというと、BBC、ガーディアン、テレグラフなどなど海外の主要メディアがこれを英語で報じていたからです。
緒方議員が子育てと仕事の両立に困っている人について社会の関心を集めたかったが何の対策をなされなかったこと、安倍首相が高齢化による労働力不足を補うために女性の活躍を促進すると「ウーマノミクス」を提唱しているにもかかわらず、男性中心社会で日本の女性は時代錯誤的な差別を受けたままだなどと報じられていました。
かたや、ニュージーランドではアーダーン首相が6週間の出産休暇を取り、その後は子供の父親が主夫となって育児を受け持っています。アーダーン首相が子連れで国連の会議に出席したとき、父親が会議室でおむつ交換をしているところに日本代表団(もちろん男性ばかり)が入ってきてびっくりしていたと面白そうに伝えていました。日本人は仕事の場で男性がおむつを替えるなど、やったことも見たこともないのだろうと。
職場や政治の場に女性を活用することは地方自治体など公の機関が積極的にやれること。民間や地域社会にお手本を示すためにも、どんどん取り入れるべきです。
社会慣習や考え方
最後に一番大切なことを話します。それは一人ひとりが今、当たり前のこととして受け入れている社会慣習や考え方について今一度考えてみようということです。
これを読んでいる人は様々だとは思うので、みんなに当てはまることではないでしょうが、ちょっと考えてみてください。
男性なら、女性である妻やお母さんに家事育児雑事を任せて当たり前に思っていませんか?
日本人男性は家事育児にかける時間が世界的に見て最低であるという調査結果が出ています。本来なら、自分の身の回りの世話くらい自分でやって当然なはずです。
女性なら、今やっている家事や育児、はたまた近所付き合いなどすべて自分がしなければならないことだと思っていませんか。
仕事もして疲れているのに食事の支度や掃除洗濯もしなくてはならず睡眠時間を削っていませんか。
子育て世代の日本人女性の睡眠時間は世界的に見て最短であるという調査結果も出ています。
男性は、女性が自分の言うことを「はいはい」と聞くのでなく自分の意見をいうと「生意気な」と感じることがありませんか。
女性は男性に対して自分の考えを言いたいけれど場の雰囲気を壊したくないので黙っていることがありませんか。
長い間の社会生活、日常生活で役出来上がっている割分担を変えることは難しいものです。でも、それを見て育つ子供たちは成長して社会に出たり自分の家庭を持つとき、そのまま同じやり方を真似てしまうため、男女の役割分担が世代を通じて受け継がれていくのです。
一人ひとりが日常生活で男女のあり方について今一度考えてみることが未来の地方にとって、そして日本にとって大切だと思います。