自治体主導の地域活性化:海外の成功事例(イギリス・ヨーク)

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York Minster

イングランド北西部にあるヨークは歴史に包まれる古都。世界遺産ともなっているヨークミンスターをはじめ、キャッスル博物館、国立鉄道博物館など観光名所がある街です。ヨーク市は街を訪問者が訪れるのに魅力的な空間にすることが大切であると認識していて、その魅力を強化するためのプロジェクトを行いました。どんなプロジェクトだったのか、その結果はどうだったのかを紹介します。

ヨーク(York)

イングランド北西部にあるヨークは四方を歴史に包まれる古都であり、ヨークミンスターをはじめ、キャッスル博物館、国立鉄道博物館など観光名所がある街です。また、街を囲む古い城壁、シャンブルスをはじめとする旧市街、アウトドアマーケット、ウーズ川沿いの散歩道などもあります。

ヨークには毎年700万人の観光客が訪れますが、その多くはヨークの街をぶらぶら歩きその雰囲気を楽しむのが目的だといいます。ヨークには世界遺産となっているヨーク・ミンスターや博物館などさまざまな観光名所があるのですが、700万人の訪問者のうちいわゆる観光名所に行くのは200万人にしか過ぎないというのは意外です。

多くの訪問客は観光名所を訪れるのが目的ではなく「古く落ち着いた街並み」や「美しい自然」があるところでその雰囲気を楽しむためにヨークを目指すというのです。

ヨーク地域活性化プロジェクト

York Shambles

少し前までヨーク市は観光名所を整備し、それを宣伝し、そこに向かう標識を立てたりすることによって観光客を増やそうとしていました。けれども、訪問客の目的がかならずしも観光名所だけではないということがわかり、街を魅力的な空間にすることが大切であると認識するにいたりました。

そこでヨーク市は2012年に「Reinvigorate York」(ヨークに活気を)という330万ポンド(約4億6500万円)のプロジェクトを行うことにしました。市内の6か所を選び、歩道や電気の整備、公共の場所に設置するゴミ箱、そして公共スペースの整備、特に徒歩、自転車、公共交通機関で移動する人のための環境を整えることに重点をおくものです。

徒歩で楽しめる環境

このプロジェクトを通してヨークが意識したのは、老若男女を問わずいろいろな人が徒歩で楽しめる環境を整えることです。そのために、車を遮断した徒歩専用エリアを整備しました。そして、歩行者専用エリアの舗道を整備し、景観に配慮したストリート・ファーニチャー(標識、ゴミ箱、ベンチなど)を置くなどの改善を行ったのです。

パブリックスペースの整備

また、いわゆる観光名所だけでなく、公園や広場、街を囲む城壁や川沿いの散歩道などのパブリック・アウトドア・スペースを整備することにも重点を置きました。標識を整備して目的地に迷わず歩いて行けるようにし、各ポイントごとのアクセスをわかりやすくする試みもなされました。

例えば、ヨークの街をぐるりと囲む城壁のアクセスポイントを明らかにするための標識を整備し、街灯も増やしました。

ストリートファーニチャーやアクセス改善

このほか、ヨークでは街中にある、公園や広場などアウトドアスペースを魅力的にするため、ストリート・ファーニチャーを改善し、川沿いの散歩道などへのアクセスも整備しました。交通拠点であるバス停、駅、駐車場から観光ポイント、そしてアウトドア・スペースへのリンクに標識をほどこし、舗道を改善することによって歩くのが快適な街となることを目指したのです。

ソフトなアトラクション

このようなハードな環境改善と共にヨークが手がけたのは、ソフトなアトラクションです。訪問者がヨークでの「経験」を楽しむことができるように、マーケット、ポップアップシアター、エンターテイメントなどのアトラクションを提供することに取り組みました。

ヨーク地域活性化プロジェクトの結果

ヨークのこのような取り組みの結果として、訪問客にとっての街の魅力が改善し、それまでにもまして訪問者が増えました。

地元経済への効果

訪問者が街でお金を使ってくれることによって地元企業に経済的なベネフィットがありました。訪問者が訪れることで、街にある店舗やサービスなどの企業も潤い、それによって地域経済や雇用も生み出せたのです。

街のイメージアップ

それだけでなく、街のイメージを良くするのに役立ち、外部の人にとってヨークは人気度の高い所になりました。イギリス国内だけでなく、国際的にも魅力的な町となっています。

ヨークは2018年度、サンデー・タイムス紙で「住みたいイギリスの街」で1位に選ばれました。同紙によると「ヨークはクールなカフェ、人気レストラン、創造力にあふれる企業があるミニ・メトロポリス」と評価されています。

地元民へのベネフィット

また街に住む人や働く人、地元の大学などで勉強する人にもよりよい環境を提供し、地域への投資を促しました。ヨークの平均住宅価格は2017~18年の1年で6.3%上がり、301,320ポンドとなっています。これは、ロンドンなど地価の高いイングランド南東部に比べて住宅価格が低いイングランド北部では突出する数字です。

自治体主催の地域活性化:ヨークの成功事例

ヨークの成功事例から学べることは、いわゆる観光ポイントだけに重点をしぼるのではなく、まち全体を住民や訪問者、すべての人にとって魅力的な場所にするのが大切だということです。

これは特に観光名所がない街でもまねできるポイントです。街を訪れる人は環境が整い、目に優しく安全で安心して歩ける場所でポジティブな体験を感じるものです。そして、そういうところには人が集まり、地元の店やサービスを使うことによって地元経済も潤います。

一見遠回りの政策のようですが、こういうことを地道にやっていくことでその街が訪問者にとっても住む人、働く人にとっても魅力的な場所になるということをヨークの事例から学ぶことができます。

 

York
 

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