今週はご近所さんにとっていいニュースが入りました。その人の隣の庭に勝手に建てられたプールの都市計画申請が却下されたということです。
近所のプール開発
コロナによるロックダウンが始まった去年の春に、うちの近所では「何かあったら助けあいましょう」という目的でWhatsApp(日本のLINEのようなもの)グループができました。外出ができない人に買い物を手伝ったり、近所のお店や医療サービスの情報をシェアしたりしてたのですが、元通りの日常生活に戻ってからはたまにしか使われていません。たとえば「写真に撮った本と本棚、処分するけどほしい人いる?」「近所で空き巣が入ったようだから注意」とか「うちの庭で飼ってたニワトリがやられた」「狐にちがいない」とか言うような。
そのWhatsAppグループが去年の夏に突然息を吹き返しました。ある人がシェアしたニュースにみんな驚いたのです。それは「うちの裏庭に面する近所の家の裏庭に何やら大きな穴が作られている」というものです。
その人が数日おきにアップデートしてくる情報と、2階の窓から撮ったという写真によると、それは庭の全長を占拠するくらいの大きなプールのようです。7mx10mくらいの大きさでしょうか。
その人の裏庭と、プールができている庭は2mの高さのレンガ塀で仕切られているため、庭からは見えませんが、家の窓からは見えます。ちなみにプールがある家は違う通りに面しているので、うちの通りのWhatsAppグループのメンバーではなく、誰も知らない人でした。
所有する家の裏庭に野外プールを作ること自体はイギリスの都市計画法では一定の条件下で許されています。保存地区など、特別な指定がない地域であるとか、商業用の目的でなく個人の娯楽用であること、道路から見えない部分に建てられることなどで、このプールは一応この条件下ではあります。自分の庭に池を作るのと何ら変わりはないという考え方なのです。なのでこの家族は都市計画法に基づく申請をしないでも大丈夫だと思ってプール建設を始めたようです。
とはいえ、イギリスはモロッコやマイアミとは違います。夏でも気温が10度台ということが多い国で、野外プールなんていくら温水を入れるにしても寒くて使えないでしょう。そう思っていたら、どうりで、そのうちプールをおおうガラスの屋根のようなものも建てられ始めました。
こうなると、ただの「池」ではなく、れっきとした建造物です。それで、これは都市計画申請が必要なはずということで、地元の都市計画課に問い合わせました。すると、やはりその通りだということで、プールの家の所有者に都市計画申請をするように指導が行きました。
本来は建てる前に都市計画申請をする必要があるのですが、申請なしで勝手に開発を始めてしまった場合、Retrospective Planning Permissionという事後の申請が必要になります。
https://globalpea.com/planning-permission
都市計画申請に反対する
その申請が公式に受理されてから、WhatsAppグループのメンバーに、近隣住民として反対の手紙を都市計画課に送ることにしようと提案しました。
プール開発者は両隣(うちのWhatsAppグループではない人たち)とは仲が良かったらしく、両隣からは「問題ありません。プールの開発を支持します。」という賛成意見が送られているようでした。それで、これでは不利かもしれないと思い、その隣人1人だけではなく、WhatsAppグループの他の隣人たちにもそれぞれ意見を送ってもらうようにしたのです。こういう手紙は多ければ多いほどいいというのは、イギリスの都市計画課で働いたことがある経験から私にはよくわかっていました。
イギリスの都市計画申請では、それぞれの開発において、隣人をはじめ一般の人が送る意見すべてを考慮に入れることになっています。その上で、その地域のマスタープランの方針や都市計画の決まりに基づいて専門家である都市計画家が申請を許可するかどうかを提案します。最終決定は市議会議員が参加する都市計画委員会で決められますが、大体において都市計画専門家の提案通りに決まります。
個々の都市計画申請に関して提出された情報、文書や図面、写真、提言を求められた専門家や近隣住民などのコメントなどもすべて公開されていて、オンラインで見ることができます。それで、プールの庭の両隣の2軒が「賛成」の手紙を送っていることも確認できたのです。
https://globalpea.com/objection
都市計画申請の結果
この都市計画申請は去年の12月に受理されたのち、コロナによるロックダウンのせいか、なかなか進まなかったのですが、ようやっと5月20日に結果が決まりました。それによると、都市計画申請は不許可となり、プールとそれを覆う建造物は取り壊さなければいけないという結果になりました。
反対の主な理由は「庭が隣接する住民のアメニティ保護」です。その住居の窓からのながめに悪影響を与えること、プール建造物が隣人の庭に影を落とすこと、夜間に使われる場合の光や騒音が隣人の平和な生活を乱す恐れがあるとあります。
これらの理由は私たちがプール建設に反対する理由として挙げてきたことです。ほかにも、商業的な目的で使用される可能性があること、その場合はプール利用者による駐車問題も出てくることなども指摘しました。それについては「申請者は商業的な目的で利用しないと主張している」「もし申請者の主張に反して商業的な目的で利用されるとしたら、それはまた別に審査されるべき」ということでした。
どちらにしてもとりあえずは、私たちが望んでいた結果になったので、一安心です。この件に関しては、プールの土地が隣接する1軒だけにかかわる問題ではあったのですが、WhatsAppグループがあったおかげでみんなの協力が得られたと、この隣人はみなに感謝していました。
とはいえ、都市計画申請が通らなかった場合、アピールする道も残されているので、これからどうなるかはまだ未定です。かなりのお金をかけて作ったプールであろうから、申請者はこのままあきらめないかもしれません。とはいえ、アピールするとしたらさらに経費がかかる上に、どちらにしても許可されない可能性もあるのでどうするかはわかりません。
今後も成り行きを見ていこうと話しています。